曽我物
町人や農民が中心で劇を運ぶ演目である「世話物」の作品です。
作品名
十六夜清心 いざよいせいしん → 花街模様薊色縫
小袖曾我薊色縫 こそでそがあざみのいろぬい → 花街模様薊色縫
花街模様薊色縫 さともようあざみのいろぬい
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花街模様薊色縫
さともようあざみのいろぬい
河竹黙阿弥
あらすじ
① 【稲瀬川百本杭の場(いなせがわ ひゃっぽんぐいのば)】
 鎌倉極楽寺に賊が入り頼朝公寄進の3000両を無くなってしまう事件が起こった。調べてみると寺の所化(修行僧)・清心坊が傾城・十六夜と関係を持っていることが発覚し、その所業を清心の仕業とみた寺は彼を追い出してしまう。絶望した清心は彼の子供を身籠っている十六夜と共に稲瀬川へ身投げをする…。
② 【川中白魚船の場(かわなかしらうおぶねのば)】
 川に身を投げた十六夜は、俳諧師・白蓮と船頭・三次が引く四つ手網にかかり助かった…。
 【百本杭川下の場(ひゃっぽんぐいかわしものば)】
 幼いころから水練の心得があった清心は死にきれずに岸に上がるとそこへ寺小姓・寺塚求女が通りかかった。癪(発作)に苦しむ彼の姿を見て、清心は彼を殺し懐にあった50両を奪ってしまう…。
④ 【初瀬小路白蓮妾宅の場(はせこうじ はくれんしょうたくのば)】
 命を助けられた十六夜改めおさよは、初瀬小路にある白蓮の妾宅で暮らすことになった。そこで彼女は白蓮だけでなく彼の父・佐五兵衛の世話も行なっていた。しかし彼女が二人の目を盗んでは清心の位牌を回向していたため、白蓮はおさよが尼になることを許し、彼女は諸国修行の旅に出る…。
⑤ 【箱根山中地獄谷の場(はこねさんちゅう じごくだにのば)】
 尼となって旅に出たおさよが箱根に着いたとき、清心改め鬼薊清吉と再会した…。
⑥ 【雪ノ下白蓮本宅の場(ゆきのした はくれんほんたくのば)】
 夫婦となった清吉とおさよは悪事にすっかり染まり、鎌倉雪ノ下にある白蓮の本宅に行き金を強請った。すると白蓮から奪った100両には極楽寺に奉納された祠堂金の封印が見つかり、さらに白蓮は清吉の兄だということも知らされ清吉は動揺する…。
⑦ 【名越無縁寺の場(なごえ むえんじのば)】
 鎌倉名越の無縁寺で墓守をしているおさよの父・西心のもとに清吉とお佐代が子供を連れてやってきた。すると西心から清心が殺した寺塚求女がおさよの弟であることを教えられ、彼は罪の意識から自ら命を絶とうとするが、誤っておさよを殺してしまう…。

※別称【小袖曽我薊色縫】【十六夜清心】

 作品の舞台
 極楽寺・・・清心坊は極楽寺の所化(修行僧)です。
 稲瀬川・・・鎌倉を追われた清心と十六夜は二人で身を投げます。
 長谷・・・初瀬小路に白蓮の妾宅があります。
 雪ノ下・・・白蓮の本宅があります。
 名越・・・西心は無縁寺の墓守をしています。
 登場人物
清心坊 極楽寺の所化(修行僧)。後に盗賊・鬼薊清吉と名乗る。下総国行徳の生まれ。
十六夜 扇屋の傾城(遊女)。清心坊の恋人。後に白蓮の妾・おさよとなり、清吉の女房となる。
西心 十六夜の父。名越無縁寺の墓守。
寺塚 求女 十六夜の弟。寺の小姓。
白蓮 鎌倉雪ノ下に住む俳諧師。その正体は盗賊・大寺正兵衛。
佐五兵衛 白蓮の父。
お藤 正兵衛の女房。
三次 船頭。
寺澤搭十郎 白蓮の下男。その正体は役人。
八重垣紋三 剣客。