昭和前半以前の作品(PART1)
昭和前半以前の作品です。著者の簡単なプロフィールは下記のとおり。

村山槐多
  洋画家・詩人としても知られる。22歳の若さで夭折。
水野仙子
  田山花袋の内弟子から作家デビュー。読売新聞社の婦人記者もつとめた。
牧野信一
  幻想的な作品を書くことから「ギリシャ牧野」と称される。
鈴木三重吉
  「日本児童文化運動の父」とも呼ばれ、児童文学作家として有名。
水上滝太郎
  慶応大学で永井荷風から教えを受け、その後泉鏡花に傾倒、筆名は鏡花の作品から名づける。
小酒井不木
  生理学の世界的権威といわれる医学博士として知られる。作風は陰惨で冷酷なものが多い。
平林初之輔
  社会主義の研究に熱心なことからプロレタリア文学運動の理論家としても有名。
渡辺 温
  横溝正史とともに雑誌「新青年」の編集に携わる。実兄は推理作家の渡辺啓助。
嘉村礒多
  作風が人間の内心を告白する「私小説」。生家は山口市で今でも保存されている。
平林たい子
  長野県諏訪生まれの無頼派作家。プロレタリア作家としても認められる。
美川きよ
  神奈川県出身。夫は画家・鳥海青児。

作品名 発行年
悪魔の舌 不明
響 1919
晩秋 1921
清一の写生旅行 1922
大震火災記 1923
九月一日 1924
深夜の電話 1928
人造人間 1928
四月馬鹿 1930
滑川畔にて 1931
謎の女 1932
薔薇 1946
女の生き方 1949
.
悪魔の舌 村山槐多 彌生書房
あらすじ
 自分のもとに1通の電報が届いた。差出人は以前ある宴会で知り合った奇異な身なりをした青年詩人の金子鋭吉だった。早速、富坂にある鋭吉の家に向うが、彼は自分の心臓を火箸で突いて自殺していた。そして死体のそばにあった文書が見つかったのだが、そこには、彼の生い立ちや彼が「寄食」に目覚めていく様が書かれていた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・鋭吉は20歳のころ、鎌倉に引っ越します。
 登場人物
自分 この物語の語り手。
金子 鋭吉 青年詩人。
金子 五郎 鋭吉の弟。
.
響 水野仙子 青空文庫
あらすじ
 肺を患い死期が近づいたことを悟った寝たきりの人妻・佐瀬澄子。その病床に届いた荷物の中から、彼女はオレンジ色の表紙の小さな手帖を見つけた。そこで澄子はその表紙に「響」と記し、従姉の百合への想いを綴ろうとしていた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・佐瀬弘一宅があります。
 登場人物
佐瀬 澄子 病床で寝たきりの人妻。27歳。
佐瀬 百合 澄子の従姉。旧姓・籾山。
佐瀬 弘一 百合の亡夫。貧乏な画家。
佐瀬純太郎 澄子の従兄。
お蔦 澄子の世話係。
.
晩秋 牧野信一 筑摩書房
あらすじ
 日曜日に妹のみち子と江の島へ行く約束を破ってしまい次の週に持ち越すことになったのだが、いざ当日になると僕はまた頭が痛くなってきてしまった。そんな僕の様子を見た母は、勉強ばかりしていないでたまには気分転換をしなさいといい、とうとう妹と江の島へ行くことになってしまった…。


 作品の舞台
 大船・・・僕たちが乗った列車は大船駅を過ぎていきます。
 登場人物
僕 物語の主人公。神経衰弱気味。
みち子 僕の妹。
岡村 僕の友だち。
正ちゃん 岡村の弟。
母 僕とみち子の母。
.
清一の写生旅行 牧野信一 青空文庫
あらすじ
 清一は小学校の展覧会に絵画を出そうとしたが、恥ずかしがり屋の彼は描いているところを人に見られたくないため、叔父が住む鎌倉でひっそり描こうと計画していた。そして鎌倉へ出向いた清一は、人が居ない松林に入り描き始めるが、まもなくして後ろから人の声が聞こえてきた・・・。


 作品の舞台
 鎌倉・・・清一の叔父の家があります。
 登場人物
山野 清一 小学生。
母 清一の母。
叔父 鎌倉に住む清一の叔父。
叔母 叔父の妻。
里 山野家の女中。
男 松林を散歩する男。
爺 老漁夫。
.
大震火災記 鈴木三重吉 青空文庫
あらすじ
 大正12年の関東大震災は、関東一帯に大きな被害をもたらした。東京だけでも41万軒の家屋が火災・倒壊し、74000人を超えるを死者を出した・・・。


 作品の舞台
 鎌倉・・・山階宮妃佐紀子女王は、鎌倉の別邸が倒壊し亡くなります。
 登場人物
大橋 陸軍特務曹長。
波多野 陸軍中尉。
林 陸軍少尉。
内田 康哉 総理大臣臨時代理。
鈴木 築地の施療院の医師。海軍軍医。
上与那原 築地の施療院の医師。海軍軍医。
河田 築地の施療院の医師。海軍軍医。
高橋 築地の施療院の事務員。
富田 深川の老巡査。
東久邇宮師正 皇族。
山階宮妃佐紀子 皇族。
閑院宮妃寛子 皇族。
摂政宮 皇族。後の「昭和天皇」。
.
九月一日 水上滝太郎 岩波文庫
あらすじ
 気位が高く神経質な両親が東京へ戻ると、息子の一郎たちは由比ガ浜の別荘でやっとノンビリ過ごせると思っていた。それぞれが想いを寄せる若者たちの恋心も膨らむはずだったが、9月1日突然の大地震が彼らを襲った。瓦は飛び、ガラスが砕け、家は柱が折れ倒壊、乙子をかばうように倒れた養子はその下敷きとなってしまった…。


 作品の舞台
 由比ガ浜・・・曲淵家の別荘があります。
 一の鳥居・・・一の鳥居のそばに岡部兄妹宅があります。
 稲瀬川・・・一郎は翠子を誘って海岸から稲瀬川の方へ歩きます。
 登場人物
曲淵 実業家。神経質。
曲淵 夫人 曲淵の妻。
曲淵 一郎 曲淵家の長男。18歳。運動が好き。
曲淵 甲子 曲淵家の長女。17歳。
曲淵 乙子 曲淵家の次女。14歳。
養子 夫人の縁戚の娘。21歳。
岡部 一郎の友人。横浜の貿易商の息子。
岡部 翠子 岡部の妹。
澤 一郎の同級生。成績優秀。18歳。
延 曲淵家の女中。
鉄 曲淵家の女中。
じいや 別荘番のじいや。
ばあや 別荘番のばあや。
.
深夜の電話 小酒井不木 論創社
あらすじ
 少年探偵の俊夫と助手の大野は、深夜に事件の調査依頼の電話を受けた。しかし、その電話は2人に挑発的で、「東京じゅうの誰でも知っている有名な人を殺した」というものだった。その後、2人は以前俊夫に調査を依頼したことのある有名女優の川上糸子が毒殺されたことを知った…。


 作品の舞台
 大船・・・俊夫と大野は伊豆山に向かう途中、大船駅を過ぎた頃に源実朝の和歌にも謳われる絶景を堪能します。
 登場人物
塚原 俊夫 少年科学探偵。
大野 俊夫の助手でワトソン役。柔道3段。俊夫は「兄さん」と呼ぶ。
川上 糸子 T劇場の女優。
近藤 つね 小石川に住む美容師。
山本 信義 俊夫が解決した事件で、容疑者と指摘され遺恨を持つ男。無職。
小田 警視庁刑事。俊夫は「Pのおじさん」と呼ぶ。
.
人造人間 平林初之輔 論創社
あらすじ
 培養液による人工生殖の動物実験に成功した村木博士が、今度は人間の人工生殖の実験を行うと発表した。この発表により学会では「人造人間の開発」と大騒ぎとなっている。そんな村木はさらに研究を続けていたが、何故か研究室に鍵をかけ、不倫関係にある助手の房子にさえも入れさせないようにしていた・・・。


 作品の舞台
 鎌倉・・・村木博士は、別邸のある鎌倉に研究拠点を移します。
 登場人物
村木 動物生理学を研究する科学者。
内藤 房子 村木の助手。村木の愛人。
村木 夫人 村木の妻。33~4歳だが、見た目は若く見える。
長男 村木の長男。14歳。作品上に名前は出てこない。
長女 村木の長女。12歳。作品上に名前は出てこない。
阿部 医学士。
寺田 理学士。
.
四月馬鹿 渡辺 温 薔薇十字社
あらすじ
 エイプリルフールの日、文太郎は妻のエミ子にオーデコロンをウイスキーにすり替えられたのを知らないまま頭にふりかけ、イライラしたまま会社へ出かけていった。さすがにやりすぎたと思い反省したエミ子だったが、夫のコートをかたずける際に知らない女性からのメッセージが書かれた便箋が見つかり、今度はエミ子がイライラしだしてしまう…。


 作品の舞台
 稲村ガ崎・・・エミ子と雄吉は江ノ島へ向かう際、小田急を使わず東京から鎌倉まで列車に乗り、車で稲村ガ崎を走ります。
 登場人物
兎沢文太郎 会社員。
兎沢エミ子 文太郎の妻。
山崎 文太郎の同僚。
雄吉 エミ子の従兄。ピアニスト。
.
滑川畔にて 嘉村礒多 ほるぷ出版
あらすじ
 近所の住民たちが避暑に向かっている中、出不精で暮らしが豊かでない私たち夫婦は、狭い自宅で暇を持て余していた。しかし、妻の話を聞いているうちに鎌倉をゆっくり歩いてみようという気になり、2人は北鎌倉の駅に降り立った・・・。


 作品の舞台
 円覚寺・・・私とユキは円覚寺を訪ねます。
 建長寺・・・私とユキは建長寺も訪ねます。
 鶴岡八幡宮・・・私とユキは鶴岡八幡宮も訪ねます。
 鎌倉宮・・・私とユキは鎌倉宮も訪ねます。
 長谷寺・・・私とユキは長谷寺も訪ねます。
 高徳院・・・私とユキは高徳院も訪ねます。
 由比ガ浜・・・私とユキは最後に由比ガ浜の海岸へ行き、滑川の河口まで歩きます。
 登場人物
私 この物語の語り手。
ユキ 私の妻。
田部 私の向かいに住む住人。
友子 近所に住む子供。
文子 近所に住む子供。
アイ子 ユキが親しくしている本郷の隠居の末娘。
.
謎の女 平林初之輔 論叢社
あらすじ
 熱海のホテルに泊まる新聞記者・島龍之介は同じ宿に逗留する山野夫人から、偽装夫婦として旅に行くことを持ちかけられた。そして二人は列車で東京へ向かうのだが…。


 作品の舞台
 大船駅・・・二人は大船駅あたりに来るまで黙ったままでした。
 登場人物
島 龍之介 新聞記者。35歳。
山野夫人 ホテルの宿泊客。22歳。
.
薔薇 美川きよ 江戸書院
あらすじ
 麻子は美術学校を辞めて療養生活に入り1年が経った。複数の会社の重役に就く父の仕事が忙しいため、現在は鎌倉にある海辺のホテルでひとり本を読んで過ごしている。そこへ美術学校時代の友人・城野や彼女の憧れの画家・八代民次たちと出会う機会ができた…。


 作品の舞台
 鎌倉山・・・麻子の友人の令嬢の家があります。
 登場人物
麻子 美術学校を2年で辞め療養生活をしている令嬢。鎌倉のホテルに滞在中。
父 麻子の父。東京にある会社の重役。
亡母 麻子の亡母。麻子が14歳の時に死亡。
令嬢 鎌倉山に住む麻子の友人。
城野 麻子の美術学校時代の友人。
八代 民次 藤沢・鵠沼に住む高名な画家。
遠藤 城野の友人。画家仲間。
.
女の生き方 平林たい子 文藝春秋新社
あらすじ
 三軒茶屋から高円寺に転居した私たち夫婦は、近所に住む住人たちや大家姉妹とも仲が良くうまいこと過ごしている。そんな私たちの前にS夫人が現れた。彼女は私たちの生活と違って贅沢のようなのだが…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・S夫人は鎌倉にあるA先生宅に通います。
 登場人物
私 杉並区高円寺に住む主婦。
夫 私の夫。売れない同人作家。
T 近所の住人。花札仲間。貧乏。
H夫人 近所の住人。花札仲間。私に着物を貸してくれる。
O夫人 近所の住人。花札仲間。
家主 私が住む家の大家。花札仲間。
妹 家主の妹。花札仲間。
A 鎌倉に住む有名作家。
S夫人 杉並区阿佐ヶ谷に住むAの女弟子。
S S夫人の夫。
やす子 Sの愛人。カフェの女給。
X S夫人の友人。会社の課長。