謡曲
能楽で使われる謡曲です。なお、リストに記載される用語は下記のとおりです。

 【シテ】 主役のこと。
 【前シテ】 中入り前の主役のこと。
 【後シテ】 中入り後の主役のこと。
 【ワキ】 脇役のこと。
 【子方】 子役のこと。
 【ツレ】 基本的にはシテに付き従って登場する役のこと。漢字では「連」。
 【ワキツレ】 ワキに付き従って登場する役のこと。
 【トモ】 シテやツレに付き従って登場する従者役のこと。
 【アイ】 能の中で後見・諸役など狂言方を勤める役のこと。
 【三番目物】 上演が「五番立て」の場合、三番目に上演する謡曲の総称。主人公が女性のものが多い。
 【四番目物】 上演が「五番立て」の場合、四番目に上演する謡曲の総称。主人公は狂女・武士・怨霊など。

作品名
景清 かげきよ
柏崎 かしわざき
小袖曽我 こそでそが
正尊 しょうそん
禅師曽我 ぜんじそが
千手/千寿 せんじゅ
檀風 だんぷう
鉢木 はちのき
船弁慶 ふなべんけい
盛久 もりひさ
夜討曽我 ようちそが
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景清
かげきよ
不明【四番目物】
あらすじ
 源平合戦後、平家の武将・平悪七兵衛景清は盲目となり日向国に流されていた。彼はかつて尾張国熱田宿の遊女との間に人丸という娘がいた。彼女は現在鎌倉で暮らしていたが、父の存命を風の噂で聞き、従者と共に日向国へ向かうことになった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・人丸が暮らしています。
 登場人物
<シテ>悪七兵衛景清 平家方の武将。戦に敗れ日向国へ流刑中。盲目。
<ワキ>里人 流刑中の景清がいる里に住む日向国の住人。
<ツレ>人丸 景清の娘。鎌倉に住む。
<トモ>従者 人丸の従者。父のもとに向かう人丸に付き従う。
<ワキ>三保谷四郎 源氏方の武将。景清と戦い戦死する。
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柏崎
かしわざき
榎並左衛門五郎/世阿弥
【四番目物/狂女物】
あらすじ
 越後で暮らす御家人・柏崎殿が訴訟のために鎌倉へ出かけた際に鎌倉で亡くなってしまい、それを嘆いた息子・花若は遁世してしまう。屋敷へ帰ってきた家臣・小太郎に伝えられた柏崎殿の奥方は物狂いとなってしまい、放浪の旅に出た末に信濃国善光寺へたどり着いた…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・柏崎殿が訴訟のために出向きます。
 登場人物
<シテ>奥方 越後国で暮らす柏崎殿の奥方。
<子方>少年僧 信濃国・善光寺の少年僧。その正体は越後国の御家人・柏崎殿。
<子方>花若 柏崎殿の息子。
<ワキ>小太郎 柏崎殿の家来。
<ワキツレ>住持 善光寺の住持。
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小袖曽我
こそでそが
不明【四番目物】
あらすじ
 1193年、頼朝公が催す富士の巻狩が行われ、曽我十郎祐成・曽我五郎時致兄弟も参加することとなった。しかし二人は参加する父の仇・工藤祐経の命を狙うことが目的だった。そんな兄弟は仇討へ行く前に曽我の里に住む母・春日局のもとに訪ねることとなった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・頼朝は富士の巻狩を催します。
 登場人物
<シテ>曽我十郎祐成 武士。曽我兄弟の兄。富士の巻狩で仇討を企てる。
<ツレ>曽我五郎時致 武士。曽我兄弟の弟。富士の巻狩で仇討を企てる。
<トモ>鬼王 曽我兄弟の従者。
<トモ>団三郎 曽我兄弟の従者。
<アイ>春日局 相模国曽我の里に住む兄弟の母。
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正尊
しょうぞん
観世弥次郎長俊
【四番目物/斬合物】
あらすじ
 兄・源頼朝に鎌倉入りを拒まれた弟・源義経は京都堀川の館で謹慎していた。そこへ鎌倉方の命で土佐坊正尊が上洛してきた。義経は兄の刺客ではないかと疑い彼を問い詰めた。すると正尊は熊野参詣のためと弁明しとっさに起請文を読み上げた。義経は彼の噓を見抜くが、あまりの名文に感心し宴席を設けて彼をもてなした…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉から土佐房正尊が上洛します。
 登場人物
<シテ>土佐坊正尊 幕府の御家人。僧。
<ツレ>源  義経 頼朝の異母弟。平家討伐軍総大将。
<子方>静御前 義経の愛妾。白拍子。
<ツレ>姉和 光景 正尊の第一の家来。
<ツレ>正尊の家来 正尊の家来。
<ツレ>義経の家来 義経の家来。
<ワキ>武蔵坊弁慶 義経の第一の家来。
<アイ>侍女 義経の侍女。
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禅師曽我
ぜんじそが
不明
【二番目物/四番目物】
あらすじ
 富士の巻狩りで仇討を果たした曽我兄弟は命を落とし、兄弟の家来・団三郎と鬼王は母親へ形見を届けその死を悲しんだ。そして兄弟の弟で僧の国上禅師に累が及ぶことを恐れ、急ぎ彼のもとに向かった。しかし禅師は彼の養父・伊東九郎祐宗に捕らえられ鎌倉へ送られた…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・国上禅師を捕らえるため、鎌倉から伊東祐宗が送られてきます。
 登場人物
<トモ>団三郎 曽我兄弟の家来。
<トモ>鬼王 曽我兄弟の家来。
<ツレ>曽我兄弟の母 曽我兄弟の母。
<シテ>国上禅師 曽我兄弟の末弟。
<ワキ>伊東九郎祐宗 曽我兄弟の養父。
<ワキヅレ>祐宗の従者 祐宗の従者。
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千手/千寿
せんじゅ
金春禅竹【三番目物】
あらすじ
 平家方の武将・平重衡は一の谷の戦いで敗れ源氏方の捕虜となり、鎌倉に護送され頼朝の家臣・狩野介宗茂の館に預けられた。虜囚の身となった重衡をいたわしく思った頼朝は、侍女の千手(千寿)を世話役に付けることにした…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・重衡が預けられた狩野介宗茂の館があります。
 登場人物
<シテ>千手/千寿 北条政子の侍女。捕虜となった重衡の世話役を任される。
<ツレ>平  重衡 平家方の武将。鎌倉・宗茂の館で虜囚の身となる。
<ワキ>狩野介宗茂 幕府の御家人。
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檀風
だんぷう
不明
【四番目物/五番目物】
あらすじ
 鎌倉方の下知により佐渡配流中の公卿・壬生資朝を誅した本間三郎。そんな彼に対して資朝の遺児・梅若と阿闍梨が仇討を果たした。二人はその後船着き場に逃げてきたのだが…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・壬生資朝を誅するために幕府は本間三郎を送ります。
 登場人物
<ワキヅレ>本間 三郎 鎌倉方の役人。
<トモ>三郎の従者 三郎の従者。
<子方>梅若 資朝の遺児。
<ワキ>阿闍梨 梅若の師。僧。
<シテ>壬生 資朝 佐渡配流中の公卿・日野資朝。梅若の父。
<ワキヅレ>船頭 佐渡へ向かう船の船頭。
<シテ>不動明王 熊野権現の不動明王。
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鉢木
はちのき
不明【四番目物】
あらすじ
 鎌倉時代中期、大雪が降る中、鎌倉を目指す一人の旅僧が上野国佐野荘に訪れた。そこで一軒の民家で一夜を過ごすこととなった。家主で武士の佐野源左衛門常世の暮らしは貧困で、寒さをしのぐため彼がお気に入りの三つの鉢ノ木を火にくべて旅僧をもてなすのだった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・常世はいち早く時頼がいる鎌倉に馳せ参じます。
 登場人物
<シテ>佐野 常世 上野国佐野荘に住む御家人。暮らしは貧困。
<シテツレ>妻 常世の妻。
<前ワキ>旅僧 諸国を旅する僧。正体は「北条時頼」。
<後ワキ>最明寺時頼 鎌倉幕府5代執権。
<ワキツレ>二階堂 某 時頼の家来。
<アイ>早打 馬に乗る急使。
<アイ>従者 二階堂の従者。
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船弁慶
ふなべんけい
観世小次郎信光
【四番目物】
あらすじ
 義経は平家追討の功績をあげたものの兄・頼朝から疑惑を持たれ鎌倉方から追われる身となった。そこで義経は忠実な従者たちと共に西国へ逃げようとするが、過酷な道行となるため妾の静を都へ戻すことになった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・頼朝は義経の行動に疑惑を持ちます。
 登場人物
<前シテ>静御前 京の白拍子。義経の愛妾。
<後シテ>平知盛の亡霊 亡くなった知盛の亡霊。
<子方>源  義経 頼朝の弟。平家討伐軍の総大将。
<ワキ>武蔵坊弁慶 義経の郎党。
<ワキツレ>従者 義経の従者。
<アイ>船頭 義経たちが西国へ向かうために乗った船の船頭。
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盛久
もりひさ
観世元雅【四番目物】
あらすじ
 源平合戦後、囚われの身となった平盛久は鎌倉方の将・土屋三郎に連れられ鎌倉へ向かった。そして処刑を明日に迎えた彼は、観音経による観音への祈りを行なった。処刑当日、処刑執行人の太刀が折れ難を逃れた盛久は、頼朝の前に呼び出された。彼は頼朝に観音の夢託があったことを語ると、頼朝も同じ夢を見た過去を話し出した…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・盛久は処刑を行なうため鎌倉に連れられてきます。
 登場人物
<シテ>平  盛久 平家方の将。
<ワキ>土屋 三郎 鎌倉方の将。頼朝の家臣。
<ワキツレ>従者 三郎の従者。
<ワキツレ>侍A 盛久を護送する侍。
<ワキツレ>侍B 盛久を護送する侍。
<間狂言>従僕 三郎の従僕。
源  頼朝 鎌倉殿。舞台上には現れず。
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夜討曽我
ようちそが
宮増【四番目物】
あらすじ
 曽我十郎祐成・曽我五郎時致兄弟は頼朝が催す富士の巻狩で父の仇・工藤祐経に仇討を仕掛けようと企てます。兄弟の心残りは相模国曽我の里に住む母のことだった。そこで兄弟は従者の鬼王・団三郎に里へ戻るように諭すのだが、死を覚悟している彼らはそれを断り、互いに刺し違えて死のうとする…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・頼朝は富士の巻狩を催します。
 登場人物
<シテ>曽我十郎祐成 武士。曽我兄弟の兄。富士の巻狩で仇討を企てる。
<ツレ>曽我五郎時致 武士。曽我兄弟の弟。富士の巻狩で仇討を企てる。
<ツレ>団三郎 曽我兄弟の従者。
<ツレ>鬼王 曽我兄弟の従者。
<ツレ>古谷 五郎 幕府の御家人。
<ツレ>御所五郎丸 幕府の御家人。
<ツレ>縄取 幕府の従者。捕らえた時致を縄で押さえる。
<アイ>大藤内/王藤内 祐経の客人。