新歌舞伎
明治後期から昭和初期にかけて、劇場に関係ない作家によって書かれた演目である「新歌舞伎」の作品です。
作品名
鎌倉山離愁赤橋 かまくらやまわかれのあかはし
修禅寺物語 しゅぜんじものがたり
頼朝の死 よりとものし
.
鎌倉山離愁赤橋
かまくらやまわかれのあかはし
蜘蛛巣堂
あらすじ
あらすじ
【序幕 第一場 鎌倉 赤橋守時館 門前の場】
 朝廷方から討伐軍が送られ鎌倉は大混乱に陥っていた。時の執権・赤橋守時は妹が朝廷方の将・足利尊氏の正室ということだけで閉門蟄居の身となっていた。赤橋家の家臣・南条左衛門や真田小弥太は戦況が知りたく幕府方の侍大将・本間山城介に聞こうとするが、足利家に情報を漏らされては困ると相手にされずにいた。そんな赤橋家へ2人の武士がやってきた。そのうちの一人は鎧に身を包んだ守時の妹・登子だった…。
【序幕 第二場 北条高時館の場】
 幕府の長老・金沢貞顕は、不利な戦況であることを信じようとせず陣替えに駄々をこねる得宗家当主・北条高時を館から連れ出そうとしていた。するとそこへ子飼いの本間山城介から登子が赤橋家へ入ったことを二人に知らせた。高時は策を思いつき赤橋家へ向かった…。
【序幕 第三場 赤橋守時館の場】
 登子は兄の守時を足利方につかせようと説いていたが、忠義心の強い守時は頑なに拒み彼女を困らせていた。そこへ高時と貞顕がやってきた…。
【大詰 第一場 洲崎 新田義貞陣所の場】
 洲崎にある新田軍の陣所では鎌倉から戻ってくる登子を迎え入れるまで攻めることができず、家臣からも不満の声が挙がっていた。そこへ登子が足利家家臣・紀十郎と僧・道本を連れてやってきた…。
【大詰 第二場 松林の場】
 僧・道本は大将・新田義貞に話があると松林へ連れ込んだ。道本の正体は赤橋守時で、彼は鎌倉の民衆のために戦を早く終わらせてほしいと説いた。すると突然道本は懐刀を手に義貞に襲いかかった…。

 作品の舞台
 鶴岡八幡宮・・・三ノ鳥居の赤橋(太鼓橋)の横に赤橋守時邸がありました。
 宝戒寺・・・北条高時(得宗家)邸があります。
 東勝寺・・・高時は陣替えをして立てこもります。
 洲崎・・・新田義貞の陣所があります。(現在の寺分1丁目)
 登場人物
赤橋 守時 鎌倉幕府16代執権。武芸に秀でた忠義の臣。
足利 登子 守時の妹。高氏の正室。
足利 高氏 登子の夫。幕府を裏切って朝廷軍に入る。作品上は出てこない。
紀十郎繁胤 足利家の家臣。登子と共に赤橋家へ向かう。
北条 高時 北条得宗家当主。14代執権。
金沢 貞顕 幕府の長老。12代連署。15代執権。
本間山城介 高時子飼いの侍大将。
藤内 山城介の小者。
南条左衛門 赤橋家の家臣。老人。
真田小弥太 赤橋家の家臣。血気盛んな若者。
新田小太郎義貞 朝廷側鎌倉討伐軍の大将。上野国新田庄の豪族。
脇屋小次郎義助 新田軍の将。義貞の弟。
大舘二郎宗氏 新田家の家臣。
船田入道義昌 新田家の家臣。
遊女 高時の寝所に居た遊女。
.
修禅寺物語
しゅぜんじものがたり
岡本綺堂
あらすじ
 修禅寺に蟄居させられている鎌倉幕府二代将軍・源頼家は、近くに住む面作り師の夜叉王の家に向かった。半年前に頼んだ面が一向にできず催促に来たのだ。夜叉王は面を作らない理由を語るが、短気な性格の頼家はそれを納得せず彼を斬ろうとした。そこへ夜叉王の娘・桂と楓が試作の面を見せると頼家は満足し、また桂のことを気に入り自分のもとで奉公させることにした…。

 作品の舞台
 鎌倉・・修禅寺に蟄居する頼家を斬るために行親がやってきます…。
 登場人物
源左金吾頼家 鎌倉幕府二代将軍。23歳。修禅寺に蟄居。
夜叉王 修禅寺近くに住む面作り師。その名は都にまで名高い。
夜叉王の長女。20歳。美しく気位が高い。
夜叉王の次女。18歳。真面目で働き者。
春彦 楓の夫。20歳。面作り師。
下田五郎景安 頼家の家来。
金窪兵衛尉行親 幕府の御家人。北条方の使い。
若狭局 頼家の亡妻。
.
頼朝の死
よりとものし
真山青果
あらすじ
 西御門にある法華堂で頼朝の三回忌法要が行なわれているが、長男で2代将軍・頼家の姿が見えなかった。そこへ卒塔婆を抱えた下女と被衣で顔を隠す少女が乱入してきた。少女の正体は大蔵の御所に仕える女房・小周防といい、政子から頼朝を弔う卒塔婆を供えるように命令されてきたのだ。するとさらにその場に覆面をした若侍・畠山重保が現れた…。

 作品の舞台
 法華堂跡(北条義時墓)・・・頼朝の三回忌法要が行なわれます。
 大倉御所・・・小周防が仕えています。
 登場人物
畠山 重保 幕府に仕える若い御家人。21歳。
小周防 御所で仕える女房。17歳。重保が恋慕している。
北条 政子 尼御台。頼朝の妻。40代半ば。
源  頼朝 政子の亡夫。鎌倉幕府初代将軍。
源  頼家 頼朝の長男。鎌倉幕府二代将軍。合理主義で短気。
大江 広元 頼朝の側近。政所別当。50代半ば。
畠山 重忠 幕府の御家人。重保の父。
小笠原弥太郎長経 頼家の側近。
中野五郎能成 頼家の側近。
音羽 御所の腰元。小周防の侍女。
慈円坊祐玄 羽黒山別当。
定海 奥州・新熊野の別当。