時代物
江戸時代の観客となる町人とって、遠く離れた題材の演目である「時代物」の作品です。江戸時代より前の武家や公家のお話が多く見られます。
作品名
一谷嫩軍記 陣門 組打ち 熊谷陣屋 いちのたにふたばぐんき じんもん くみうち くまがいじんや
近江源氏先陣館 盛綱陣屋 おうみげんじせんじんやかた もりつなじんや
梶原平三誉石切 かじわらへいぞうほまれのいしきり
鎌倉三代記 絹川村閑居 かまくらさんだいき きぬがわむらかんきょ
御所桜堀川夜討 藤弥太物語 ごしょざくらほりかわようち とうやたものがたり
御所桜堀川夜討 弁慶上使 ごしょざくらほりかわようち べんけいじょうし
壇浦兜軍記 阿古屋 だんのうらかぶとぐんき あこや
ひらがな盛衰記 神崎揚屋 ひらがなせいすいき かんざきあげや
ひらがな盛衰記 源太勘當 ひらがなせいすいき げんたかんどう
ひらがな盛衰記 逆櫓 ひらがなせいすいき さかろ
義経千本桜 よしつねせんぼんさくら
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一谷嫩軍記 陣門 組打ち 熊谷陣屋
いちのたにふたばぐんき じんもん くみうち くまがいじんや
並木宗輔・浅田一鳥など合作
あらすじ
①【陣門・組打ち】
 熊谷直実は義経軍に従軍して一の谷の戦いに参加した。その際、平家方の若侍・平敦盛が後白河院の落胤と知らされた義経は、直実に「敦盛だけは助けよ」と密命を知らせる。やがて戦いは始まり須磨浦の平家陣屋に戦いを仕掛ける源氏方に圧倒され、沖の船に逃げていく平家方の将たち。その中で直実は若侍に一声かけ一騎打ちに持ち込むが、若侍は敦盛の身代わりで敗走していた直実の息子・小次郎だった。直実は相手が息子と知りつつ組み伏せその首をとった…。
【一谷嫩軍記・二段目】


②【熊谷陣屋】
 合戦も終わり直実は生田の森にある熊谷の陣屋に戻ってきた。すると突然彼は一人の女に襲われた。彼女は敦盛の母・藤の方だった。そこで直実夫婦の縁を取り持ってくれた恩人でもある藤の方に、直実は敦盛の最後の様子を丁寧に語りかけた…。
【一谷嫩軍記・三段目】

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉にいる頼朝は、義経を大将とした平家討伐軍を送ります。
 登場人物
熊谷次郎直実 源氏方の将。義経軍に従軍。元・後白河の北面武士「佐竹次郎」。
相模 直実の妻。元・京の御所の女官。
熊谷小次郎直家 源氏方の将。直実の長男。
源  頼朝 源氏の棟梁。鎌倉殿。
源  義経 平家討伐軍の大将。頼朝の弟。
亀井六郎 義経の家来。
片岡八郎 義経の家来。
伊勢三郎 義経の家来。
駿河次郎 義経の家来。
平  敦盛 平家の若侍。笛の名手。後白河の落胤。
平  経盛 敦盛の父。清盛の異母弟。
藤の方 敦盛の母。経盛の妻。直実にとっては相模との縁を取り持った恩人。
堤  軍次 敦盛の家来。
玉織姫 敦盛の婚約者。時忠の娘。
平  清盛 敦盛の叔父。故人。
平  重盛 清盛の長男。故人。
平弥兵衛宗清 元・重盛の家臣。石屋「白毫の弥陀六」として暮らす。頼朝・義経の恩人。
重盛の娘。弥陀六のもとで隠棲する。
平  時忠 清盛の妻の弟。玉織姫の父。
梶原平三景時 鎌倉方の将。軍奉行。
梶原平次景高 鎌倉方の将。景時の次男。
平山武者所 鎌倉方の将。
法然 出家後の直実の師。浄土宗の開祖。
麦六 百姓。
幸兵衛 庄屋。
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近江源氏先陣館 盛綱陣屋
おうみげんじせんじんやかた もりつなじんや
近江半二・八民平七・松田才二
竹田新松・近松東南など合作
あらすじ
 朝廷が師事する幕府将軍・源頼家と幕府の重鎮・北条時政の権力争いがますます激しくなってきた。幕府に仕える佐々木一族も家を護るため二手に分かれ、兄の盛綱は鎌倉方(時政方)に、弟の高綱は京都方(頼家方)に付くことになった。その戦の中で盛綱の子・小三郎は高綱の子・小四郎を捕らえていた。そこへ高綱の使者・和田秀盛がやってきて小四郎の開放を要求するが、主からの命がなければ出来ぬと断られ、秀盛は北条時政のもとへ向かった…。
【近江源氏先陣館・八段目】

 作品の舞台
 大倉御所・・・幕府は頼家と時政の権力争いで二手に分かれます。
 登場人物
佐々木三郎兵衛盛綱 知勇兼備で情に厚い鎌倉方の将。
早瀬 盛綱の妻。
佐々木小三郎盛清 盛綱と早瀬の長男。
佐々木四郎左衛門高綱 京都方の将。盛綱の弟。
篝火 高綱の妻。
佐々木小四郎高重 高綱と篝火の長男。
微妙 盛綱と高綱の母。
信楽太郎 盛綱方の注進(戦況報告をする将)。
伊吹藤太 盛綱方の注進。
北条 時政 鎌倉方の大将。
源  頼家 京都方の大将。
和田兵衛秀盛 京都方の将。
榛谷十郎 京都方の将。
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梶原平三誉石切
かじわらへいぞうほまれのいしきり
文耕堂・長谷川千四
あらすじ
①【目利き】
 早春の鎌倉八幡宮に平家方の将・大庭景親とその弟・俣野五郎が参詣に来ていた。そこへ同じ平家方の梶原平三景時が梅を観にやってきた。そんな3人が酒を酌み交わしているところへ、青貝師の六郎太夫とその娘・梢が訪ねてきて景親に家宝の刀を買ってほしいと頼み込んだ…。

②【二つ胴】
 平三は刀を一目見て名剣と称賛したが、五郎は2人重ねて一刀で斬る「二つ胴」を試すべきだと意見してきた。しかし試し切りされる囚人は一人しかいなかったため、六郎太夫は娘を安全な場所に送り自ら犠牲となり試し切りを申し出た…。

③【石切】
 大庭兄弟は試し切りの結果を嘲り笑い立ち去るが、平三は六郎太夫が頼朝再興の軍資金調達のために刀を売ろうとしたことに気が付き、買い上げる約束をして彼らを梶原館に連れて行った…。

 作品の舞台
 鶴岡八幡宮(鎌倉八幡宮)・・・大庭兄弟は参詣に、梶原平三は梅を観にやってきます。
 登場人物
梶原平三景時 知勇を備えた平家方の将。
大庭三郎景親 平家方の将。大庭御厨の住人。
俣野五郎景久 平家方の将。景親の弟。血気盛んな若者。
六郎太夫 青貝師(螺鈿細工の職人)。大助の子。
六郎太夫の娘。文蔵の許嫁。
三浦 大助 源氏方の将。六郎太夫の亡父。
真田 文蔵 源氏方の将。
剣菱 呑助 囚人。
萬平 大庭の宴に呼ばれた奴。
源  頼朝 源氏の棟梁。
伊東入道祐親 平家方の将。伊豆国伊東の住人。
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鎌倉三代記 絹川村閑居
かまくらさんだいき きぬがわむらかんきょ
近松半二・八民平七・松田才二
三好松洛・竹田新松・近松東南
竹本三郎兵衛(合作)
あらすじ
 戦場で負傷した京方の重臣・三浦之助義村は絹川村の実家に帰館した。館には病に伏している三浦之助の母・長門と彼の許嫁で敵軍の大将・北条時政の娘・時姫が暮らしている。時姫は夫婦の契りとしてすがりつくのだが、三浦之助は敵将とは繋がれないとしてはねつけていた。時姫はそんな彼の態度に絶望して自害をしようとするが、そこへ父が率いる鎌倉方の足軽・安達籐三郎が現れた…。
【鎌倉三代記・七段目】

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉にいる時政は、時姫のもとに何人もの家臣を送ります。
 登場人物
三浦之助義村 京都方の重臣。
時姫 三浦之助の許嫁。時政の娘。
長門 三浦之助の母。病で伏している。歌舞伎では「長門」だが、原作には名が無い。
北条 時政 鎌倉方の大将。時姫の父。
安達籐三郎 鎌倉方の足軽。実は京都方の智将・佐々木高綱。
籐三郎 元武士の地元の百姓。高綱の身代わりとなって首を時政に送られる。
おくる 籐三郎の女房。
古郡新左衛門 鎌倉方の将。
富田 六郎 新左衛門の家臣。
阿波局 時姫の侍女。
讃岐局 時姫の侍女。
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御所桜堀川夜討 藤弥太物語
ごしょざくらほりかわようち とうやたものがたり
文耕堂・三好松洛
あらすじ
 義経の正室・卿の君は夫・源義経が暮らす堀川御所に匿われていた。しかしそれを知った義経の妾・静の兄・藤弥太は鎌倉方に注進しようとしていた。静の母・磯禅司は行動をおこそうとする藤弥太を止めようとしている最中にとうとう刺してしまう。善心に戻った藤弥太は死の間際に「今夜、鎌倉勢の夜討ちがある」と告げて息絶えてしまった…。
【御所桜堀川夜討・四段目】

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉勢の武士たちが義経を夜討ちしようと企てます。
 登場人物
源  義経 平家討伐軍の大将。京で暮らしている。
静御前 義経の愛妾。
卿の君 義経の正室。堀川御所で暮らす静の侍女・しのぶとして隠れ住む。
磯禅司 静の母。
藤弥太 磯禅司の長男。静の兄。悪党。
源  頼朝 鎌倉勢の棟梁。
梶原平三景時 鎌倉勢の将。頼朝の腹心。
番場 忠太 梶原家の家老。
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御所桜堀川夜討 弁慶上使
ごしょざくらほりかわようち べんけいじょうし
文耕堂・三好松洛
あらすじ
 義経の妻・卿の方は懐妊し、父・平時忠の家臣で乳母夫の侍従太郎の館に預けられていた。そこへ館の腰元・信夫の母・おわさが安産祈願のため家伝の海馬のお守りを持参し館へ来て彼女を励ましていた。そんな中、女嫌いで知られる義経の家臣・弁慶が館にやってくると聞いた彼女たちは、いたずらを仕掛けようとする…。
【御所桜堀川夜討・三段目】

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉にいる頼朝は、義経の行動に疑念を持ちます。
 登場人物
源  頼朝 源氏の棟梁。鎌倉殿。
源  義経 頼朝の異母弟。平家討伐軍の大将。
梶原平三景時 頼朝の懐刀。平家討伐軍の軍奉行。
梶原平次景高 景時の次男。
弁慶 義経の家来。女嫌い。
卿の方 義経の妻。
平  時忠 卿の方の父。平家一門。
侍従太郎 時忠の家臣。卿の方の乳母夫。
花の井 太郎の妻。卿の方の乳母。
信夫 太郎館の腰元。
吉野 太郎館の腰元。
松葉 太郎館の腰元。
紅梅 太郎館の腰元。
太郎館の腰元。
おわさ 信夫の母。御物師(裁縫師)。
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壇浦兜軍記 阿古屋
だんのうらかぶとぐんき あこや
文耕堂・長谷川千四
あらすじ
 壇ノ浦の戦いも終わり平家が滅亡した後、源氏方の将・畠山重忠たちは今なお頼朝の首を狙う悪七兵衛景清を捕らえようとしていた。そこで景清の妾で遊女の阿古屋を捕らえ堀川御所で景清の行方を白状させることになった。重忠の助役・岩永たちは拷問にかけ白状させようとするが、重忠はそれを止め諭そうと試みる。しかし景清に行方を知らされていない阿古屋は何も言うことができず、重忠はとうとう「琴責め」で彼女を白状させようとする…。
【壇浦兜軍記・三段目】

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉方の将たちは、平家の残党狩りを行ないます。
 登場人物
阿古屋 京・五條坂の遊女。景清の妾。
平悪七兵衛景清 平家方の将。平家滅亡後、頼朝の首を狙う。
畠山秩父庄司重忠 知勇兼備の源氏方の将。
岩永左衛門宗連 源氏方の将。景清に遺恨がある重忠の助役。またの表記が「岩永致連」。
榛沢六郎重清 重忠の家来。
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ひらがな盛衰記 神崎揚屋
ひらがなせいすいき かんざきあげや
文耕堂・三好松洛・浅田可啓
竹田小出雲・竹田出雲など合作
あらすじ
 梶原家から勘当を渡された源太を養うために、恋人の千鳥は摂津・神崎の廓に身を沈め傾城「梅ヶ枝」となった。源太は梅ヶ枝に預けていた産着の鎧を取りに来るが、彼女は源太の揚代を作るために鎧を質に入れてしまっていた…。
【ひらがな盛衰記・四段目】

 作品の舞台
 十二所・・・源太は梶原館の父から勘当されます。
 登場人物
梶原源太景季 景時の長男。通称「鎌倉一の風流男」。
千鳥 景季の恋人。神崎の廓で傾城「梅ヶ枝」となる。
梶原平三景時 梶原家当主。
延寿 源太の母。
お筆 千鳥の姉。
亭主 神崎の揚屋の亭主。
質屋 質屋の主人。
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ひらがな盛衰記 源太勘當
ひらがなせいすいき げんたかんどう
文耕堂・三好松洛・浅田可啓
竹田小出雲・竹田出雲など合作
あらすじ
 鎌倉の梶原館では源平合戦に出陣中の長男・梶原源太景季の誕生祝いの準備が進んでいた。次男の平次景高は館にいる腰元で源太の恋人・千鳥に横恋慕しているため、仮病を使って出陣せず執拗に彼女を口説いている。そこへ平次の手下・横須賀軍内が現れ、宇治川の戦いで源太が佐々木高綱との先陣争いで遅れを取ったため、源太に切腹を命じる旨の手紙を持ってきたのだ…。
【ひらがな盛衰記・二段目】

 作品の舞台
 十二所・・・梶原平三景時の館があります。
 登場人物
梶原平三景時 幕府の重臣。梶原家当主。
梶原源太景季 景時の長男。通称「鎌倉一の風流男」。
梶原平次景高 景時の次男。
延寿 景時の妻。源太・平次の母。
千鳥 梶原館の腰元。源太の恋人。平次に横恋慕される。
佐々木高綱 源氏方の将。
横須賀軍内 平次の手下。
鎌田 隼人 源氏方の将。千鳥の父。
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ひらがな盛衰記 逆櫓
ひらがなせいすいき さかろ
文耕堂・三好松洛・浅田可啓
竹田小出雲・竹田出雲など合作
あらすじ
 摂津国・福島の船頭・権四郎の家で前の聟の三回忌法要が行われていた。しかしその場にいた近所の人々は権四郎の孫・槌松がまるで別人のようになっていることに気づき、権四郎に理由を聞くと旅先でおきた捕物騒ぎで子どもを取り違えたと語り、本物の槌松の帰りを待っているというのだ…。
【ひらがな盛衰記・三段目】

 作品の舞台
 十二所・・・梶原館から松右衛門が戻ってきます。
 登場人物
権四郎 摂津国・福島の老漁師。隠居の身。
およし 松右衛門の妻。権四郎の娘。3年前に前夫を亡くす。
松右衛門 およしの夫。船頭。正体は義仲の家臣「樋口次郎兼光」。
槌松 松右衛門とおよしの子。権四郎の孫。
源  義経 源氏方の将。
木曽 義仲 義経の従兄弟。
山吹御前 義仲の正室。討手の梶原勢に捕まり非業の最期を遂げる。
駒若丸 義仲と山吹の嫡男。母と共に非業の最期を遂げる。
梶原平三景時 源氏方の将。
畠山庄司重忠 源氏方の将。
日吉丸又六 梶原方から権四郎の家に送られた船頭。
灘吉九郎作 梶原方から権四郎の家に送られた船頭。
明神丸富蔵 梶原方から権四郎の家に送られた船頭。
お筆 梶原館の腰元。
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義経千本桜 
よしつねせんぼんざくら
竹田出雲・三好松洛
並木千柳(合作)
あらすじ
①【序幕 北嵯峨庵室 堀川御所(じょまく きたさがあんしつ ほりかわごしょ)】
 源平合戦で勝った源義経は、後白河院に呼ばれ不思議な霊力を持つ宝物「初音の鼓」を与えられた。しかし院の寵臣・藤原朝方は鼓を使って義経と兄・頼朝の仲を裂こうと画策する。一方、敗れた平氏の嫡男維盛の妻・若葉内侍とその子・六代は北嵯峨の草庵に隠棲していた。そこへ維盛の家臣・主馬小金吾武里が現れ、維盛が生きているといわれる高野山へ3人で旅立つことになった。また義経の京の住まいに頼朝の使者で舅の川越太郎重頼が訪ね、鎌倉方が抱く疑念を義経に詰問した。そして義経の答えをそのまま伝えても疑念が晴れないとわかった義経の妻・卿の方は自害をしてしまう…。

②【鳥居前(とりいまえ)】
 義経は家来の駿河次郎、舅の川越太郎重頼と共に多武峰の寺へ向かう途中で静と弁慶が追いかけてきた。しかし多武峰は女人禁制なため静を連れていくことができない。また弁慶のせいで卿の方の死が無駄になったため、弁慶を責めるが静も一緒に謝り許してもらう。そして今度は船で西国へ向かうことにした義経たちは、危険な船旅に静を連れていくことができず形見として「初音の鼓」を渡し、彼女を樹に縛り付けていってしまった。そんな彼女を追手の残党・逸見藤太が見つけてしまった…。

③【渡海屋 大物浦(とかいや だいもつのうら)】
 義経は九州へ船で向かうために、摂津・大物浦の船宿に逗留し天候の回復を待っていた。そこへ追手の相模五郎が来てしまうが船宿の主人・銀平夫婦に追い払われてしまう。そこで銀平は嵐の中で義経たちに船出を勧めるが、銀平の正体は平知盛で彼は義経を討ち取ろうと思っていたのだ…。

④【木の実 小金吾討死 すし屋(きのみ こきんごうちじに すしや)】
 若葉内侍・六代・小金吾の三人が高野山へ行く途中、吉野・下市村の茶屋で休んでいるときにならず者に金を強請り取られてしまう。このならず者の名前は「いがみの権太」といい、すし屋の主人・弥左衛門が勘当した息子だった。逃げだした若葉内侍たちはさらに朝方の家来・猪熊大之進が追ってきてしまい、単身で戦った小金吾は斬られ死んでしまう・・・。
 
⑤【道行初音旅 川連法眼館(みちゆきはつねのたび かわつらほうげんやかた)】
 義経が吉野に匿われていることを聞きつけた静がその途中で「初音の鼓」を打っていると義経の家来・忠信が現れ共に吉野へ向かうことになった。一方、吉野・川連法眼館で匿われていた義経のもとに佐藤忠信が現れるが話している内容から何かを疑う義経。そんな彼らの前に静と忠信が登場する。義経は二人の忠信の真偽を確かめるため静に「初音の鼓」を打たせると、静とともに現れた忠信の正体が狐であったことを知る…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉にいる頼朝は、義経を追うために何人もの御家人を上洛させます。
 登場人物
源  義経 源氏方の将。頼朝の異母弟。源九郎。
卿の方 義経の正室。
静御前 義経の愛妾。
源  頼朝 源氏の棟梁。義経の異母兄。鎌倉殿。
梶原 景時 鎌倉方の将。頼朝の腹心。
川越太郎重頼 鎌倉方の将。卿の方の父。義経の舅。
海野太郎 鎌倉方の将。
土佐坊正尊 鎌倉方の将。
相模五郎 鎌倉方の将。実は銀平の手の者。
武蔵坊弁慶 義経の家来。
佐藤 忠信 義経の家来。
佐藤 嗣信 義経の家来。忠信の亡兄。
亀井六郎 義経の家来。
片岡八郎 義経の家来。
伊勢三郎 義経の家来。
駿河次郎 義経の家来。
平  清盛 平家の棟梁。故人。
平  重盛 清盛の長男。故人。
平中納言知盛 清盛の四男。身元を隠し摂津国大物浦の船頭「渡海屋銀平」として暮らす。
典侍の局 安徳帝の乳母。銀平の妻「お柳」として暮らす。
安徳帝 第81代天皇。銀平の一人娘「お安」として暮らす。
平  維盛 重盛の嫡男。清盛の孫。身元を隠し吉野・下市村のすし屋の下男「弥助」として暮らす。
若葉内侍 維盛の正室。
六代 維盛と若葉の子。
主馬小金吾武里 維盛の忠臣。
平能登守教経 清盛の甥。比叡山横川の荒法師「横川覚範」として暮らす。忠信にとっては兄の仇。
逸見 藤太 義経を捕らえに来る「道化敵」。
後白河院 第77代天皇。朝廷の権力者。
藤原 朝方 後白河の寵臣。義経を嵌めようとする。
猪熊大之進 朝方の家来。
すし屋弥左衛門 吉野・下市村の釣瓶鮓屋の主人。
お里 弥左衛門の女房。権太の母。
いがみの権太 弥左衛門とお里の息子。無法者。
小せん 権太の女房。茶屋の娘。弥助と祝言をする予定。
善太 権太と小せんの息子。
川連法眼 吉野の荒法師。義経を匿う川連法眼館の主人。
東光坊蓮忍 鞍馬山の別当。義経・川連法眼の師。
鬼佐渡坊 吉野の荒法師。
法橋坊 山科の荒法師。
文覚 高雄山の高僧。