川端康成の作品(その1)
川端康成の作品です。

川端康成
  学生時代に菊池寛に見いだされ頭角を現し、その後「新感覚派」作家として注目を浴びる。彼自身1935年に林房雄の誘いで鎌倉市浄明寺に居を移し、その後二階堂、長谷と転居した。
作品名 発行年
再会 1946
過去 1946
1947
生きてゐる方に 1947
雨の日 1947
再婚者 1948
千羽鶴 1949
山の音 1949
舞姫 1950
岩に菊 1952
無言 1953
波千鳥 1953
夫のしない 1958
美しさと哀しみと 1961
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再会 川端康成 新潮社
あらすじ
 太平洋戦争が敗戦して2か月、再び人間の感性を取り戻そうとしていた厚木祐三は鎌倉の鶴岡八幡宮で偶然、愛人だった富士子と再会した。小太りだった彼女はすっかり痩せこけてしまい、戦時下の貧しい生活も容易に想像できた。そんな彼女が再び人間としての生活を出発させるため、少しの間養ってほしいと懇願してきた…。

 作品の舞台
 鶴岡八幡宮・・・「文墨祭」へ行った祐三は富士子と偶然再会します。
 登場人物
厚木 祐三 既婚者の中年男。都内の家を焼け出され友人の借間に居候の身。
富士子 祐三の愛人。独身。
祐三の妻。甲府へ疎開中。
祐三の子。甲府へ疎開中。
アメリカ兵 進駐軍の軍楽隊の兵。
看護婦 東京駅ホームにいる赤十字の看護婦。
復員兵 看護婦に助けを求める復員兵。
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過去 川端康成 新潮社
あらすじ
 敗戦後すぐの鎌倉、再び祐三は富士子を連れて鶴岡八幡宮を散策した…。
『再会』の続編。

 作品の舞台
 鶴岡八幡宮・・・鳥居の前から複数のアメリカ軍ジープが走っていきます。
 段葛・・・祐三は富士子に倶生神の話をします。
 登場人物
厚木 祐三 既婚者の中年男。
富士子 祐三の愛人。独身。
将校 電車の乗客。若い将校。
母親 電車の乗客。女の子の母親。
女の子 電車の乗客。
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川端康成 新潮社
あらすじ
 鎌倉の窪地に住むRのもとに、近くに住む生活苦のN夫人が絵を売りに度々訪ねてくる。そして縁側でうたた寝をしてしまう。彼女が持ってくる絵はRにとってあまり興味がわくものではないのだが、今回持ってきた女が描かれている絵はちょっと興味が惹かれるものだった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・Rが住む家があります。
 登場人物
鎌倉に住む男。
N夫人 絵を売りに来る夫人。
若死にした書家。
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生きてゐる方に 川端康成 新潮社
あらすじ
 私の友人の大学講師・野口が教え子の千代子と再婚することになった。随分と年の離れた妻や野口の先妻の連れ子・照子の気持を心配していたのだが結婚した2年後、大学生となって上京してきた照子が私にある相談をしてきた…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・私の家があります。
 登場人物
40過ぎの私立大学講師。千代子の知人。
京子 私の娘。
野口 私の友人。40過ぎの私立大学講師。千代子の結婚相手。
千代子 野口の教え子で再婚相手。26歳。
野口 照子 野口の先妻との連れ子。16歳。
男の子 野口と千代子の長男。8歳で死亡。
女の子 野口と千代子の長女。3歳年下。
野口 梅子 野口の先妻。女流作家。私の友人。一年前に死亡。
女中 野口家の女中。
千代子の妹。16歳。
前田 結婚前の千代子の恋人。
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雨の日 川端康成 新潮社
あらすじ
 鎌倉に住む源吉の娘・京子の婚約者・西崎が挨拶にやってくるようだ。そのため京子は祖母や伯母を駅まで迎えに行ったり、その準備で忙しそうにしている…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・源吉や京子が暮らす家があります。
 大船・・・京子がよし子や路子を迎えに行きます。
 登場人物
源吉 鎌倉に住む男。
京子 源吉の娘。
源吉の亡妻。京子の亡母。東京育ち。
西崎 京子の婚約者。
よし子 源吉の母。京子の祖母。70歳過ぎ。
路子 源吉の伯母。よし子の妹。70歳過ぎ。
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再婚者 川端康成 新潮社
あらすじ
 私の師である池上が結核で亡くなり、若妻の時子はその後私と夫婦となった。時子には清・房子という子供がいたが、池上の弟夫婦の元で暮らしていた。その房子に結婚の話が持ち上がったのだが、房子は実母の時子ではなく、私にある疑問をぶつけてきた…。

 作品の舞台
 称名寺・・・私は時子と房子と共に立ち寄ります。
 安国論寺・・・房子の結婚相手の家が、海棠が名高い大木のある寺の近くにあります。
『房子の描いた地図の通りに私達は鎌倉郵便局の横へ折れた。(原文のまま)』、および
『時子は山門を入ると、そこの茶店の婆さんのところへ行って(原文のまま)』という部分から
「大町方面にあり、海棠の木が有名で、山門横に茶店がある」安国論寺と推測しました。
 由比ガ浜・・・私と時子は9月に入って人気の少ない砂浜に行きます。
 登場人物
作品の主人公。文学者。
時子 私の妻。
池上 私の文学の師。高等学校の国文学の教師。時子の前夫。結核で死亡。
池上と時子の長男。
房子 池上と時子の長女。21歳。清の妹。
池上の弟。清・房子の養い親。
愛子 池上家の女中。
女中 色街の女中。
娼婦 色街の娼婦。15歳。
小さな娼婦 13歳で死んだ娼婦。
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千羽鶴 川端康成 新潮文庫
あらすじ
 鎌倉の円覚寺で行われた茶会で、太田夫人は亡き情人の面影をもつ彼の息子・菊治と出会った。そしてその帰り道、2人はお互いに誘ったとも抵抗したともなく、夕食をとった宿でそのまま一夜を共にしてしまう…。

 作品の舞台
 円覚寺・・・ちか子主催の茶会で、太田夫人は菊治と出会います。
 登場人物
三谷 菊治 25歳前後の会社員。
菊治の父。4年前に死亡。
菊治の母。内気な性格。父に続いて死亡。
太田夫人 父の情婦。45歳前後。
太田 文子 夫人の娘。22歳。
稲村ゆき子 菊治の見合い相手。裕福な家庭の令嬢。
栗本ちか子 父の情婦。茶道の師匠。
女中 三谷家に長く仕える老女。
大泉 京都の茶道具屋。
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山の音 川端康成 新潮文庫
あらすじ
 信吾は同じ会社に勤める息子の修一とその妻・菊子、信吾の妻・保子の4人で鎌倉の谷戸にある家に住んでいる。彼は数年前に喀血をし、さらに物忘れをするなど目に見える衰えを感じるようになってきた。ある夜、地鳴りのような「山の音」を聞いた彼は、自らの死期を宣告されているような気がして、恐怖を覚えるのだが…。

 作品の舞台
 鎌倉駅・・・信吾たちは家に帰る際に、鎌倉駅を利用します。
 高徳院・・・信吾は里子と高徳院へ行き、大仏と与謝野晶子の歌碑を見ます。
 登場人物
尾形 信吾 東京に勤める会社の重役。62歳。
尾形 保子 信吾の妻。63歳。
相原 房子 信吾と保子の長女。夫婦仲がうまくいってない。
尾形 修一 信吾と保子の長男。房子の弟。信吾と同じ会社に勤める。
尾形 菊子 修一の妻。8人兄弟の末っ子。旧姓・佐川。20歳前後。
相原 房子の夫。麻薬の密売業者で麻薬中毒者。
相原 里子 相原と房子の長女。4歳。
相原 国子 相原と房子の次女。0歳。
谷崎 英子 信吾の会社の女事務員。22歳。
夏子 信吾の会社の女事務員。
相田 信吾の会社の元重役。昨年、脳溢血で死亡。
板倉 信吾の会社の前社長。
絹子 修一の愛人。戦争未亡人。洋裁店に勤める。
池田 絹子の同居人。戦争未亡人。
鳥山 信吾の旧友。元役人。
宮本 信吾の旧友。工場長。
水田 信吾の旧友。
鈴本 信吾の旧友。
北本 信吾の旧友。
たつみ屋 信吾の旧友。指物師。3~4年前に死亡。
加代 尾形家の元女中。
雨宮のじいさん 雨宮家に居候する老人。
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舞姫 川端康成 新潮社
あらすじ
 元・バレリーナの波子は昔の恋人・竹原と密会を重ねていた。上流階級の暮らしをしていた波子の家庭教師をしていた夫の元男は、彼の母親と共に波子をうまく丸め込め、結婚までもっていき彼女の財産にたかる生活をしている。元男は妻の浮気を感づいていながら、それを観察しているのだ…。

 作品の舞台
 北鎌倉・・・浪子の元実家の別荘に矢木家の4人も暮らしています。
 登場人物
矢木 元男 国文学者。波子の元・家庭教師。
矢木 波子 元男の妻。41歳。元・バレリーナ。鎌倉と日本橋にバレエ教室を持つ。
矢木 高男 元男の長男。東京大学の学生。父を尊敬する。
矢木 品子 元男の長女。21歳。新橋の「大泉バレエ団」に通うバレリーナ候補生。
元男の母。波子の財産にしがみつく。
竹原 波子の結婚前の恋人。妻子持ちの実業家。
沼田 波子のマネージャー。波子を現役復帰させようと画策する。
日立 友子 波子のバレエ教室の助手。品子の幼なじみ。
友子の不倫相手。40歳代。妻は病弱。
香山 品子の元・バレエの先生。昔は波子の踊りのパートナー。伊豆に在住。
野津 「大泉バレエ団」トップ男子ダンサー。品子に求婚する。
北見 教科書出版社の編集員。
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岩に菊 川端康成 新潮社
あらすじ
 鎌倉に15年ほど住む私は、市内の寺院にある石造美術を見てまわることが好きだ。石造美術とはいうもののその多くが墓や宝篋印塔なのだが、それらを見ていると私は故郷にある小さな菊が植えられた大きな岩を思い出すのだ…。

 作品の舞台
 覚園寺・・・私は石造美術を見に行きます。
 極楽寺・・・私は石造美術を見に行きます。
 鶴岡八幡宮・・・私は石造美術を見に行きます。
 建長寺・・・私は石造美術を見に行きます。
 別願寺・・・私は石造美術を見に行きます。
 五所神社・・・私は石造美術を見に行きます。
 浄光明寺・・・私は石造美術を見に行きます。
 二階堂・・・私は覚園寺の谷戸に10年ほど住んでいました。
 登場人物
鎌倉に15年ほど住む作品の主人公。
私の妻。
友人 私の友人。妻のために小さな宝篋印塔を建てる。
女の幽霊 故郷の岩に首を浮かべる女の幽霊。
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無言 川端康成 新潮社
あらすじ
 隣町の鎌倉に住む友人で作家の大宮明房が病に倒れ、作品を全く書かなくなってしまった。彼のことを見舞おうと三田は逗子から鎌倉までタクシーで向かうのだが、その途中運転手がトンネルに出没する幽霊のことを話し始めた…。

 作品の舞台
 小坪隧道・・・タクシー運転手は、トンネルに出る幽霊の話をします。
 名越・・・大宮明房邸があります。
 登場人物
三田 逗子に住む作家。
大宮 明房 鎌倉に住む作家。三田の友人。
大宮 富子 明房の娘。実家で父の世話をしている。
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波千鳥 川端康成 新潮文庫
あらすじ
 ゆき子と結婚した菊治は、伊豆山の宿へ新婚旅行に向かった。一方彼がその行方を気にかけていた文子は、父の郷里から旅を続けていた…。
『千羽鶴』の続編として描かれた作品。

 作品の舞台
 円覚寺・・・ちか子は菊治とゆき子が出会った円覚寺の茶会の思い出話をします。
 登場人物
三谷 菊治 25歳前後の会社員。
菊治の父。4年前に死亡。
太田夫人 父の情婦。45歳前後。
太田 文子 夫人の娘。22歳。
稲村ゆき子 菊治の見合い相手。裕福な家庭の令嬢。
栗本ちか子 父の情婦。茶道の師匠。
ゆき子の父。
ゆき子の妹。
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夫のしない 川端康成 新潮社
あらすじ
 デッサンの講習会で知り合って以来、大学生の順二と人妻の桐子の中はだんだんと深まっていった。さらに二人は人目を憚って東京で会うようにしていた。しかし、桐子は突然順二に別れを切り出した…。

 作品の舞台
 北鎌倉・・・順二、桐子の家があります。
 登場人物
順二 北鎌倉に住む大学生。
桐子 北鎌倉に住む人妻。
桐子の夫。52歳。
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美しさと哀しみと 川端康成 新潮社
あらすじ
 暮れの29日、小説家の大木年雄は昔の恋人・上野音子に会うため、特急「はと」に乗って京都へ向かった。日本画家として有名になった音子は未だに独身だが、女弟子のけい子と暮らしているのだという。年雄は若い頃に音子を早産の上死産させ、彼女は自殺未遂をおこし、それ以来会っていなかったのだ…。

 作品の舞台
 山ノ内・・・大木年雄宅があります。
 建長寺・・・太一郎はけい子を案内します。
 円覚寺・・・太一郎はけい子を案内します。
 登場人物
大木 年雄 北鎌倉に住む小説家。55歳。関西生まれ。
大木 文子 年雄の妻。47歳。年雄の原稿をタイピングするアシスタント。
大木太一郎 年雄の長男。24歳。私立大学の国文科の講師。
大木 組子 年雄の長女。太一郎の妹。陽気な性格。結婚後ロンドンに居住。
上野 音子 年雄の昔の恋人。40歳。京都に住む日本画家。
坂見けい子 音子の弟子。20歳。音子とはレズビアンの関係。気が小さい。東京生まれ。
音子の亡父。生糸や絹の貿易商。
音子の亡母。肺癌で死亡。
音子の家で暮らす手伝いの婆さん。
けいこの兄。
土門  拳 写真家。