『路地』
三木卓著の短篇連作集『路地』に掲載された作品です。

作品名 発行年
古書肆文芳洞 1997
破風のある家 1997
天元号彷徨 1997
レイチェル・チャンの前髪 1997
白粥の輝く朝 1997
高野川を過ぎていく雲 1997
いくたびか繰り返された夜 1997
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古書肆文芳洞 三木 卓 講談社
あらすじ
 若宮大路にある古書店「古書肆文芳洞」の店主・西内良平は、先代から引き継ぎ30年ほどこの地で店を構えている。その間、いろいろな客が店を訪ねてきたが、この頃特に気になる客は娘を連れて雑誌を探しに来た40歳ぐらいの女性客と、良平の家族のことまで調べ上げている男性の冷やかし客だ…。

 作品の舞台
 若宮大路・・・良平が経営する『古書肆文芳洞』があります。
 太鼓橋・・・良平は幼い頃、七五三の記念撮影をします。
 大町・・・雑誌「健康時代」を文芳洞に売った九島光朗宅があります。
 登場人物
西内 良平 若宮大路にある古書店『古書肆文芳洞』の店主。
西内 俊子 良平の亡妻。15年前に死亡。清泉女学院卒。
良平の亡父。時計会社「精工舎」勤務。
良平の亡母。体が弱い。
良平の兄。2人の子持ち。
後妻 父の後妻。すぐに離婚する。
武藤 紀子 「文芳洞」の客。
紀子の娘。顔が紀子似。
祖父 紀子の亡祖父。雑誌「健康時代」編集長。
九島 光朗 「文芳洞」の客。雑誌「健康時代」のバックナンバーを店に売る。
林  雅人 「文芳洞」の客。良平の家族のことを調べ嫌味を言いに来る冷やかし客。
留学生 父にセルフタイマーカメラを譲った中国人留学生。
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破風のある客 三木 卓 講談社
あらすじ
 大学4年になった正木茜は、死んだ恋人・九島志朗の弟・光朗から電話がかかってきた。それは兄の形見の品をもらってほしいと、志朗の実家への誘いだった…。


 作品の舞台
 小袋谷・・・正木茜が住むアパートがあります。
 
東照寺橋・・・九島光朗宅は橋の近くにあります。
 若宮大路・・・西内が経営する古書店「古書肆文芳洞」があります。
 登場人物
正木  茜 鎌倉女子大学の4年生。小袋谷在住。
九島 志朗 茜の恋人。故人。
九島 光朗 志朗の弟。会社員。
西条 洋子 茜のルームメイト。鎌倉女子大学生活科学科1年生。ラクロス同好会所属。
加納 和美 茜の元ルームメイト。大学中退後、芸能プロの下働き。
志朗・光朗の母。実家は六本木の和菓子屋。
西内 良平 古書店「古書肆文芳洞」店主。
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天元号彷徨 三木 卓 講談社
あらすじ
 人力車「天元号」を操る車夫・羽沢豊は、昔は沼津の伯父の会社で働いていたのだが、人間関係のトラブルでその地に居られなくなり鎌倉へやってきたが、今では村木という弟子もできるまでの存在になっていた…。


 作品の舞台
 鶴岡八幡宮・・・八幡宮での結婚式を行うため、花嫁花婿を人力車で運びます。
 大町・・・九島光朗宅があります。
 寿福寺・・・羽沢は光朗と母を人力車で送ります。
 東慶寺・・・羽沢は光朗と母を人力車で送ります。
 登場人物
羽沢  豊 人力車「天元号」を操る車夫。学生時代はサッカー部員。
羽沢 房江 豊の妻。
村木 人力車「千福号」を操る車夫。豊の弟子。
豊の兄。沼津市在住。
伯父 豊の伯父。沼津にある食料品卸売商「兼よし」社長。
長男 伯父の長男。「三井物産」の商社マン。慶応大卒。
次男 伯父の次男。獣医。北海道在住。
早智子 伯父の長女で末娘。
雅子 早智子の娘。若くして死亡する。
九島 光朗 大町に住む会社員。
光朗の母。
山口 鎌倉にあるアンティークショップの店主。
花婿 八幡宮で結婚式を行なう新郎。
花嫁 八幡宮で結婚式を行なう新婦。
松田 花嫁花婿の友人。
ミチ 花嫁花婿の友人。
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レイチェル・チャンの前髪 三木 卓 講談社
あらすじ
 一人暮らしで職に就かず、世間を卑下する目で見る生活をしてきた林雅人は、今日も市立図書館へ行って閲覧用の新聞や雑誌からお気に入りの記事を勝手に切り抜いて盗んだが、とうとう図書館職員に捕まってしまった。だからといって反省をするでもなくすごすごと彼が自宅アパートに帰ると、ポストには就職面接の不採用通知が届いていた…。


 作品の舞台
 鎌倉市立図書館・・・雅人が新聞や雑誌を勝手に切り抜きます。
 大町・・・雅人が住むアパートがあります。
 若宮大路・・・『古書肆文芳洞』に閉店のお知らせが貼られています。
 登場人物
林  雅人 大町に住む一人暮らしの無職の男。友達もおらず世間を皮肉った目で見る。
林 なつえ 雅人の亡妹。
高桑 正行 鎌倉市立図書館主任司書。
和泉 芳美 鎌倉市立図書館司書。出納係。
雅人・なつえの亡父。
雅人・なつえの母。養護施設に入所している。
レイチェル・チャン 雅人が気に入っているシンガポール出身の歌手。
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白粥の輝く朝 三木 卓 講談社
あらすじ
 鎌倉市立図書館の主任司書をする高桑正行は、今夜自宅に長女・眞知子の恋人が挨拶に来ることを気にしていた。しかし眞知子の妹弟の協力もあって良好な会話もでき家族に溶け込んでいるようだった。しかし正行にはもう一つ問題があった。それは眞知子が受け入れていない正行の後妻・きよ子の存在だ…。

 作品の舞台
 鎌倉市立図書館・・・正行・芳美が勤めています。
 極楽寺・・・高桑正行宅があります。
 大船・・・きよ子が住むアパートがあります。
 登場人物
高桑 正行 鎌倉市立図書館主任司書。10年ほど前に先妻を亡くす。
高桑眞知子 正行の長女。27歳。藤沢にある製薬工場に勤務。
高桑美知子 正行の次女。料理専門学校の生徒。
高桑 龍治 正行の長男。高校3年生。
高桑きよ子 正行の後妻。眞知子に受け入れられず家出、大船のアパートで別居する。
一江 きよ子の短歌仲間。
奈良原 眞知子の恋人。眞知子が働く製薬会社の技師。
図書館の客。館内で買い物袋を盗まれる。
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高野川を過ぎていく雲 三木 卓 講談社
あらすじ
 京都・大原にある土産店で働く鹿島藤江は、今日も多数の接客で忙しい日々を過ごしている。しかしここに行きつくまでには、たくさんのウソにまみれた恋愛の繰りかえしによるものだった…。


 作品の舞台
 大町・・・藤江の実家の鮨屋があります。
 若宮大路・・・藤江は若宮大路にある古書店の主人とも男女の関係にもなりました。
 雪ノ下・・・都留の実家の風呂屋があります。
 登場人物
鹿島 藤江 京都・大原にある土産物店の店員。実家は大町の鮨屋の娘。
佐治 藤江の中学時代の体育教師。
都留 藤江の元恋人。実家は雪ノ下の風呂屋。
西内 良平 若宮大路にある古書店「古書肆文芳洞」の店主。
京都に来た観光客。
エリザベス 娘の友人。コロンビア大学院生。日本の古典文化の研究を専攻。
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いくたびか繰り返された夜 三木 卓 講談社
あらすじ
 70歳を過ぎた売れない詩人・木内慧は文学仲間たちも亡くなり寂しい生活を過ごしていたが、あるトラブルで知り合った新聞配達の少年・村上や、行きつけのスーパーの店員・菜子たちに声をかけられるようになり、気楽に生活ができるようになってきた…。


 作品の舞台
 清川病院・・・慧が診察に行きます。
 ユニオン鎌倉店・・・菜子が働いています。
 三州屋(架空の店名)・・・慧の大好物は「三州屋」の卵とじうどんです。
 二階堂・・・木内慧宅があります。
 登場人物
木内  慧 売れない詩人。70歳過ぎ。小樽市出身。
村上 亮一 藤沢の製薬会社の社員。学生時代、新聞配達の途中に慧の車に轢かれる。その後慧のもとで生活をする。福島生まれ。
村上美也子 亮一の妻。
長女 亮一の長女。
長男 亮一の長男。
吉原 菜子 ユニオン鎌倉店の店員。23歳。
文子 慧の学生時代の恋人。
翠子 慧の行きつけのバーの女。
小熊 秀雄 慧の同郷の先輩作家。故人。