文学の大家の作品(その6)
文学の大家とよばれる作家の作品集です。各作家のプロフィールは下記のとおり。

寒川鼠骨(さむかわ・そこつ)
  正岡子規門下の俳人。子規の遺族を見守り、遺稿・遺墨の保存に尽力。
椿  実
  東京府神田生まれの小説家。日本神話の研究家としても有名。
阿部 昭
  東大卒の小説家。私小説の短編が得意。
加堂秀三
  大阪生まれの小説家。『涸瀧』で吉川英治文学新人賞を受賞。
中上健次
  和歌山生まれの小説家。『岬』で第74回芥川賞を受賞。

作品名 発行年
鎌倉の下女 1927
鎌倉の人 1928
浄瑠璃寺の雨 1977
1978
春の岸辺 1982
まどろむ入江 1982
黄水仙 1982
天鼓 1984
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鎌倉の下女 寒川鼠骨 改造社
あらすじ
 私が逗留する宿に二人の下女がいた。ひとりは店先の商いを担当するニコニコ顔で美人のお高、もうひとりは宿の台所を担当する憂いのある顔立ちのお岸。ある日そのお高が代理人の婆さんに借金の方として渡していたカナリヤを置いて、男と共に駆け落ちしてしまった。そこで宿の女将は後任の下女・お鶴を見つけてきたのだが、すると今度はお岸が仕事に嫌気がさして実家へ帰りたいと言い出したのだ…。


 作品の舞台
 稲村ガ崎・・・私が逗留する宿があります。
 登場人物
物語の語り手。宿に逗留している。
女将 宿の女将。
お高 宿の下女。笑顔がかわいい美人。店先の担当。
お岸 宿の下女。憂いのある顔立ち。台所の担当。
お鶴 お高の後任の下女。
お花 お岸の後任の下女。お鶴の妹。働き者。
お蔦 新入りの下女。
宿の主人の妾。
婆さん お高の代理人。
情夫 お高の情夫。鳶職の若者。
次兄 お岸の次兄。横浜の商館で働く。
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鎌倉の人 寒川鼠骨 改造社
あらすじ
 私が逗留する宿の向かいに和建築の二階家があるのだが、いつもそこからピアノの音が聞こえてくる。どうやらそれはその家で暮らす西洋人の女性が弾いているようだが、その庭で遊ぶ子供の母ではないというのだ…。


 作品の舞台
 稲村ガ崎・・・私が逗留する宿があります。
 稲瀬川・・・異国人の子どもが小舟を作って流して遊びます。
 海濱院・・・散歩中の私が女とすれ違うのは海濱院の前あたりです。
 登場人物
物語の語り手。宿に逗留している。
女中 宿の女中。情報通。
宿の向かいに家を持つアメリカ人。現在ロシアに単身赴任中。
父の亡妻。
子ども 父の子ども。
叔母 父方の叔母。子どもの母代わり。アメリカ人。丸顔。ピアノが趣味。
叔父 叔母の夫。アメリカ人。
コック アメリカ人の家のコック。
女中 アメリカ人の家の女中。
浜へ行く途中にある家に住む女。元・琴の師匠。現在は西洋人の妾。
コック 女の家のコック。
浜辺を散歩する女。25~6歳。
老人 女と一緒に散歩する老人。
主人 風呂屋の主人。
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浄瑠璃寺の雨 加堂秀三 講談社
あらすじ
 小宮有紀子は小さい頃に両親を失い2人の兄弟と共に叔母・絹代が暮らす奥山家に預けられたが、兄弟たちは叔母と折り合いが合わず家を出てしまい、残った有紀子はそのまま奥山家の養女として育てられた。しかし絹代は奈良に住むパトロン・宗像源次郎との絆を深めるため、彼女を宗像に嫁がせようとしていた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・有紀子の亡祖母は鎌倉で暮らしていました。
 佐助・・・有紀子と美代が小宮家の菩提寺へ墓参りに行きます。
 登場人物
奥山有紀子 小宮家の長女。27歳。奥山家の養女。雅之の妹。聡の姉。
奥山 絹代 港区青山に住む有紀子たちの叔母。45歳。生け花教授「尾月紅寿」。
宗像源次郎 奈良市高畑町に住む実業家。52歳。絹代のパトロン。
小山田 源次郎の秘書。
美代 奥山家の女中。
榊原 雅之 有紀子の兄。俳優。港区麻布狸穴町のマンションに住む。
小宮  聡 有紀子の弟。
木谷 吾郎 絹代の情夫。35歳。グラフィックデザイナー。
喜多見三郎 有紀子の恋人。33歳。テレビ局のディレクター。
三郎の同僚。49歳。テレビ局のプロデューサー。
権田 三郎の同僚。テレビ局のディレクター。
高山 三郎の同僚。テレビ局の演出部員。
喜多見康江 三郎の姉。35歳。伊豆・修善寺の旅館の女将。
中村 喜助 康江が経営する旅館の番頭。
室伏恵理子 聡の恋人。大田区田園調布生まれ。港区白金猿町のマンションに住む。
机 龍之助 大物俳優。
市村猿三郎 若手歌舞伎俳優。
柳沢 恭子 売れない新人女優。新宿のバー「鰐魚」のホステス。
倉野 圭子 テレビタレント。25歳。岡崎市生まれ。
長森 基子 新人タレント。
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阿部 昭 講談社
あらすじ
 海辺にある仕事場で昭は末っ子が楽しみにしていた雪が降り出した事に気がついた。そこで自宅にいる妻に電話をしてみたが、息子は意外とあっけない態度だった…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉の女生徒たちが浜辺を歩きます。
 登場人物
阿部  昭 物語の語り手。辻堂東海岸に仕事場を持つ小説家。
阿部 玉枝 昭の妻。
息子 昭の息子。末っ子。
女生徒 鎌倉に通う女生徒。
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春の岸辺 阿部 昭 福武書店
あらすじ
 わたしの大学1年目が終わろうとしていた頃、浪人中だった高校の同級生たちもそれぞれ進路が決まったり決まらなかったりと色々な話が耳に入ってきていた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・宮代の家があります。
 腰越・・・わたしは小森から浅岡の家庭教師を頼まれます。
 登場人物
わたし 物語の語り手。おそらく「阿部 昭」本人。藤沢市鵠沼松が岡に住む。
わたしの母。
亀山 わたしの親友。浪人生。藤沢市辻堂大平台に住む。
亀山の母。
相沢 わたしの友人。心配性な浪人生。小田原市生まれ。藤沢市に住む。
長妹 相沢の長妹。ミッション系の短大生。
早川 わたしの友人。浪人生。茅ヶ崎西浜に住む。
早川の母。
鳥居 3歳年上のわたしの友人。横浜市鶴見区東寺尾に住む。
上条 わたしの友人。浪人生。
橋爪 わたしの友人。浪人生。
宮代 わたしの友人。浪人生。鎌倉市に住む。
中井 わたしの母の友人。茅ヶ崎市に住む会社員。
美津子 中井の新妻。関西訛り。
小森 わたしの高校時代の英語教師。
朝岡 鎌倉市腰越に住む小森の知人。中学2年生。
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まどろむ入江 阿部 昭 福武書店
あらすじ
 もう29年前の話になる。永松は3年ぶりに湘南電車の中で同級生の権田に会った。権田とは一緒にいたずらをした悪友だったが、柔道に関しては勝つまでやめない横暴さをもち、それに関してはいい思い出がないのだ…。

 作品の舞台
 龍口寺・・・永松と権田は腰越・江の島周辺を散策します。
 鶴岡八幡宮・・・義子は権田と同じクラスになれるように願掛けします。
 登場人物
永松 物語の語り手。
権田 作家。永松の同級生。法科卒。広島生まれ。
福原 義子 権田の幼なじみ。広島に住む小学校教師。
マー 巨大な地域猫。
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黄水仙 椿  実 立風書房
あらすじ
 学生時代に何でも話し合えた親友同士だった交野と高辻は、それぞれが妻を娶り居を構えるようになると、お互いの夫婦仲については話をしないままだった。そして男勝りな性格とお嬢様育ちという相反する生き方をしていたそれぞれの妻をもつ2人はあるトラブルに巻き込まれてしまう・・・。


 作品の舞台
 極楽寺・・・交野家があります。
 材木座・・・高辻家があります。
 登場人物
高辻 鎌倉市材木座に住む食味研究家。33歳。
高辻 銀子 高辻の妻。33歳。料理研究家。高辻とは大学演劇部の同期。旧姓・安田。
交野 鎌倉市極楽寺に住む実業家。33歳。高辻の大学時代の親友。
交野 美羽 交野の妻。秋田にある酒造業の娘。お嬢様育ち。婦人雑誌の蒐集家。
香蝶 若い芸妓。
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天鼓 中上健次 河出書房新社
あらすじ
 彼は親友の連れに誘われ「天鼓」という能を観賞した。その内容が父と子の絆を描いたものだったが、それを見た彼は生まれ故郷の熊野へ行きたいと思い始めた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・連れが転居します。
 登場人物
熊野生まれの青年。会社を辞め無職となったばかり。
連れ 彼の中学時代からの柔道部仲間。鎌倉へ転居。
彼の妻。
彼の父。現在は妻と離婚し他家で暮らす。
彼の母。心臓が悪い。
義父 妻の父。連れの父の知人。
連れの父。製薬会社の役員。
連れの兄。
連れの妻。
朝田 彼や連れの同級生。熊野の高校教師。
浮浪者 駅にいた浮浪者。