昭和前半以前の作品(PART2)
昭和前半以前の作品です。著者の簡単なプロフィールは下記のとおり。

牧 逸馬
  日本の作家。林不忘・谷譲次・牧逸馬の3つのペンネームを持つ。
浜尾四郎
  元・検事、弁護士。加藤男爵家から浜尾子爵家の婿養子となる。
  実弟はコメディアンの古川ロッパ。
木々高太郎
  探偵小説家。大脳生理学の医学博士。『人生の阿呆』で直木賞受賞。
甲賀三郎
  公務員から「本格派探偵作家」に転身。乱歩、宇陀児、正史らとともに活躍。
角田喜久雄
  伝奇小説家。神奈川県横須賀市生まれ。
氷川 瓏
  幻想怪奇系の探偵作家。実弟は探偵作家の渡辺剣次。
大坪砂男
  乱歩が選ぶ「探偵作家戦後派五人男」のひとり。元・警視庁鑑識課員。
岡田鯱彦
  推理作家。国文学者の顔を持ち「源氏物語」をテーマにした作品もある。
楠瀬正澄
  小説家。元「国民新聞」記者。

作品名 発行年
一九二七年度の挿話 1927
鉄鎖殺人事件 1933
死頭蛾の恐怖 1935
債権 1937
蟇屋敷の殺人 1938
硫酸殺人鬼 1939
死体昇天 1946
睡蓮夫人 1956
幽霊はお人好し 1958
三味線殺人事件 1961
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一九二七年度の挿話 牧 逸馬 春陽堂
あらすじ
 鎌倉に住む彫刻家の小宮は、友人の岸村に誘われ夫人と共に横浜へ中華料理を食べに行った。そしてその帰り道、ふと前を通った古道具屋に置かれていた露西亜製の木製衣装箱を気に入って買い取り、岸村に頼んで自邸のアトリエまで運んでもらった。するとその日の夜、アトリエから不思議な音が聞こえるようになった…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・小宮邸があります。
 登場人物
小宮 鎌倉に住む彫刻家。
小宮夫人 小宮の妻。
岸村 小宮の友人。
ナタリヤ 露西亜人の女性。
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鉄鎖殺人事件 浜尾四郎 河出文庫
あらすじ
 芝南佐久間町の質商・日野勘兵衛が自宅で鉄鎖で高手小手に縛られ殺害された。現場の床には破られた西郷隆盛の肖像画が一面に敷き詰められ、階段にはロウソクの蝋がミミズのように流れて固まっていた。近所の住民の話から事件当時に一人の婦人が現場となった質店「薩摩屋」の裏口から入っていたことがわかったが、どうやらその婦人は、私立探偵・藤枝真太郎の友人・小川雅夫の親類の娘・大木玲子だった・・・。

 作品の舞台
 材木座・・・雅夫は材木座の赤坂邸に家出をして隠れている玲子を迎えに行きます。
 登場人物
藤枝真太郎 銀座に事務所を構える私立探偵。元・検事。
小川 雅夫 真太郎の高校時代の友人。雑誌社に勤める。
雅夫の母。雅夫と二人暮らし。
大木 玲子 雅夫の母の妹の娘。21~2歳。
関山 鉄三 玲子の許婚。工務店の機械技師。
若宮 貞代 富豪夫人。37歳。資産家の一人娘でわがまま育ち。
若宮 静雄 貞代の2番目の夫。30歳。
若宮万之助 貞代の亡父。資産家。
老女 若宮家の老女中。耳が不自由。
黒井 明光 若宮家の顧問弁護士。丸の内に事務所を構える。
峰岸 澄江 黒井の秘書。元・会社のタイピスト。21~2歳。
奥田 とめ 元・貞代の養女の乳母。現在は三浦郡長井村に住む。関山の叔母。
大西 久吉 元・とめの内縁の夫。飲んだくれ。
日野勘兵衛 芝南佐久間町の質屋「薩摩屋」の主人。67歳。貞代の元夫。
金沢 佐助 「薩摩屋」の通い番頭。30歳。下宿先は雑司ヶ谷。
谷口 くま 「薩摩屋」の通い女中。52歳。
斎藤  謙 「薩摩屋」の隣の「佐久間アパート」の住人。「日本生命」丸の内支社の外交員。
北田友次郎 「佐久間アパート」の住人。関山の異母弟。
柿崎 正雄 「佐久間アパート」の住人。
萩原 「薩摩屋」の近所のガレージの店員。
坂本初太郎 萩原の友人。「栄商会」の運転手。
高木 信吉 「薩摩屋」の近所の喫茶店のコック。42歳。
書生 真太郎の事務所に通う書生。
奥山 東京刑事地方裁判所検事局の検事。
野村 東京刑事地方裁判所の予審判事。
店員 銀座のカバン店の店員。
老爺 銀座の骨董店の店主。
老婆 鎌倉の材木座にある「赤坂邸」に住む老婆。
高橋 警視庁警部。真太郎の顔見知り。
根岸 警視庁警部。
児島 警視庁刑事。高橋の部下。
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死頭蛾の恐怖 甲賀三郎 東都書房
あらすじ
 昭和日報に所属する敏腕若手新聞記者・獅子内俊次は、「材木置場の立入禁止」という広告依頼をしてきた下北沢にある昆虫飼育場へ取材に行った。すると近所にある富豪の家で家族が次々と紅い斑紋がでて苦しみながら死んでいく事件が起きていることを知った…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・高林寅市邸があります。
 登場人物
獅子内俊次 丸の内にある「昭和新報」の敏腕若手記者。神田のアパートに住む。
尾形  稔 「昭和新報」の名物編集長。俊次とは仕事上の師弟関係。
青木 作造 元・刑事の私立探偵。俊次の友人。
高林 熊次 下北沢に住む大富豪。
高林 とみ 熊次の亡先妻。
高林 あさ 熊次の後妻。元・高林家女中。
高林きぬ子 熊次の養女。13歳。
玉野  豊 熊次の親類の子。高林家で預かる。15歳。
高林 寅市 熊次の亡兄。鎌倉に住んでいた屑鉄商。鉄成金。関東大震災で死亡。
高林とし子 寅市の妻。ふみ子の姉。旧姓・八巻。
高林 寅吉 寅市の息子。16歳。関東大震災で行方不明。
八巻ふみ子 とし子の妹。
本藤権之進 下北沢にある「本藤昆虫飼育場」の場長。」
唖青年 「本藤昆虫飼育場」の助手。唖。
中谷 守利 下北沢に住む会社役員。
中谷夫人 守利の妻。
息子 守利の息子。
松山大次郎 本所業平町にあるタクシー会社「竹内ガレージ」の運転手。
金子 友吉 本所業平町にあるタクシー会社「竹内ガレージ」の運転手。
女中 東京郊外にある旅荘の女中。
事務員 俊次が住むアパートの受付兼事務員。
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債権 木々高太郎 講談社
あらすじ
 神経科医・大心地章次が受け持つ患者・田川が東京郊外の沼地で溺死体となって発見された。彼は医者に通うような神経病ではなかったが、債権に関してだけは情け容赦のない態度で金銭を要求する異常性格を持っていた…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・大心地は鎌倉にあるKK大学の講義に出向きます。
 登場人物
大心地章次 神経病科の医学博士。鎌倉にあるKK大学の教授。
志賀 大心地の同僚。医学博士。
田川 真吉 大心地が受け持つ患者。金貸し業。町会の書記。
田川夫人 真吉の妻。
甲田 青年実業家。
亀山 甲田の実業家仲間。
新井 甲田の実業家仲間。
満本 甲田の実業家仲間。
落合 警視庁警部。
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蟇屋敷の殺人 甲賀三郎 河出文庫
あらすじ
 「丸の内工業倶楽部」の前に停まっていた自動車の中で、男性の首なし死体発見された。警察が遺体の所持品を調べたところ、被害者は世田谷に住む資産家・熊丸猛と断定されたが、熊丸邸を訪ねた警察は猛本人と遭遇する。一方、探偵作家の村橋信太郎は萱場警部の協力を得て事件の解明に臨むが、彼は熊丸邸で秘書として働く元・恋人の松島あい子と再会する。あい子が信太郎に「事件にかかわるな」と再三忠告してくる態度に、彼は事件の暗い闇を感じながら捜査をすすめていく…。


 作品の舞台
 扇ヶ谷・・・事件を調べる萱場警部は、扇ヶ谷の実相寺(架空の寺名)で襲われます。
 登場人物
村橋信太郎 探偵小説家。32歳。世田谷区若林在住。帝大法科卒。元・官庁の役人。
熊丸  猛 世田谷区下北沢にある通称「蟇屋敷」に住む資産家。50歳。慶応大中退。
熊丸麻里子 猛の後妻。
熊丸  咲 猛の亡先妻。39歳の時に火事で焼死。
栗井 熊丸家の執事。69歳。
熊丸家の小間使い。
松島あい子 猛の秘書。元・信太郎の恋人。25歳。
女中 松島家の女中。
留岡 熊丸家の運転手。
熊丸  喬 猛の亡父。大地主。
吉見 清子 麻里子・信太郎の知人。外交官夫人。
兼田ますみ 麻里子の友人。実業家夫人。
今井 滝子 麻里子の友人。実業家夫人。
神並紀美子 麻里子の友人。実業家令嬢。24~5歳。
長瀬 私立探偵。「長瀬探偵事務所」所長。
新山 敏介 「長瀬探偵事務所」調査員。
田沼 源作 「巴ガレージ」の円タク運転手。
山口 徳恵 鎌倉市扇ヶ谷にある実相寺の住職。
勘三 実相寺の下男。
細木信太郎 南千住に住む大工。
細木 しま 信太郎の母。元・熊丸家の女中。67歳。
日向  清 「ヴエノスアイレス号」水夫長。50歳。猛と三つ子の兄弟で、日向家の養子。
日向 甚吉 清の異母兄。70歳。埼玉県豊野村の百姓。卒中をおこし寝たきり。
日向 甚太 甚吉の亡父。清の亡養父。
甚吉の長男の嫁。35~6歳。
君香 大阪の芸者。
駒井 君香のなじみ客。
伴野 弁護士。君香の官選弁護人。
石井 達也 弁護士。伴野の友人。
田宮 九十九里の漁師。栗井の孫娘の嫁ぎ先。
猛・清と三つ子の兄弟。他家へ養子に出される。
お花 横浜の波止場の商売女。
おかみ 大井町の麻雀クラブのおかみ。
女給 銀座のカフェ「ドートンヌ」の女給。村橋と顔なじみ。
女将 築地の待合「水月」の女将。
少女 銀座の西洋料理店「銀箭」の女給。
萱場 警視庁警部。村橋の知人。
森川 警視庁刑事。
藤木 警視庁刑事。
石井 警視庁刑事。
富永 警視庁刑事。
署長 丸の内署署長。
高島 丸の内署警部。
竹尾 丸の内署刑事。
木野 丸の内署巡査。
岡田 甲州街道沿いの駐在所の巡査。
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硫酸殺人鬼 楠瀬正澄 大日本雄弁会
講談社
あらすじ
 本所石原町の高橋貞三宅の天井裏から女の死体が発見された。その死体は身元判別がしにくい状態で、顔は硫酸で焼かれ蛆が湧いている状態だった。転居したばかりの高橋夫妻に死体の身元もわからず、警察は部屋の前の住人・植田浅吉を捜査するのだが…。

 作品の舞台
 鎌倉・・・鎌倉での海水浴で浅吉と芳子が出会います。
 登場人物
高橋 貞三 本所石原町に住む会社員。29歳。
高橋美津技 貞三の妻。25歳。
佐川 春吉 貞三宅の大家。46歳。
植田 浅吉 貞三宅の前の住人。日本橋本石町にある食料品会社「村田商店」の店員。長崎生まれ。
村田吉三郎 「村田商店」社長。浅吉の義父。
植田 芳子 吉三郎の娘。浅吉の新妻。
植田 義彦 浅吉の父。長崎県西彼許郡に住む。
萩原 由蔵 神田小川町に住む浅吉の現在の大家。
萩原もと子 由蔵の妻。
岩崎甚太郎 高田雑司ヶ谷に住む浅吉の友人。28歳。鹿児島県肝属郡生まれ。
岩崎 まつ 甚太郎の妻。25歳。
森永 きよ 甚太郎の元恋人。料理店の女中。
千田 義磨 小石川区小日向町に住む会社員。
署長 本所署長。
折柄 本所署刑事課長。
池上 本所署刑事課警部。
澤村 本所署刑事課刑事。
近藤 小日向町の駐在巡査。
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死体昇天 角田喜久雄 角川文庫
あらすじ
 S温泉へ行った菅沼時子は夫・幸次を宿に置いて友人の浅川と2人で裏のA山へスキー遠征に行った。しかし悪天候に阻まれ浅川は滑落し、時子は命からがら宿へたどり着いた。その後幸次は浅川を探しに山へ向かうと、谷から這い上がっていた彼に遭遇する…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・時子は鎌倉にある親戚の家に出かけます。
 登場人物
菅沼 幸次 会社員。S温泉の生まれ。
菅沼 時子 幸次の妻。学生時代の幸次の下宿の大家の娘。
浅川 幸次の幼なじみ。時子に惚れている。
署長 S温泉署の署長。
親戚 鎌倉に住む時子の親戚。
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睡蓮夫人 氷川 瓏 ちくま文庫
あらすじ
 K市に転地療養していた私は、ある5月の日の夜、友人に連絡しようと「猫地蔵」の公衆電話に行くと、そこで妖しく美しい女性と出会った。そして彼女に魅了された私は後日、散歩の途中である洋館の二階にその女性の姿を目にした…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・私はK市(湘南の海に臨む、歴史的に有名な古い町【現文のまま】)に療養のため滞在します。
 登場人物
K市(鎌倉市がモデル)に転地療養する作家。
K市の外れに住む新進作家。私の友人。
K市の洋館に住む男。
男の亡妻。
青年 女の浮気相手。
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幽霊はお人好し 大坪砂男 桃源社
あらすじ
 虚弱体質で引っ込み思案な夏川は、ユーモア作家として世に出るために親友の探偵作家・秋山と相談しある企てをした。するとそれがうまくいき現在では鎌倉文士として闊歩するのだが…。


 作品の舞台
 長谷・・・夏川が暮らす和朗アパートがあります。
 登場人物
夏川 虚弱体質で引っ込み思案なユーモア作家。鎌倉・長谷にある和朗アパートに暮らす。
春子 夏川の恋人。民衆娯楽雑誌「光クラブ」の婦人記者。
秋山 探偵小説家。夏川の唯一の親友。
社長 「光クラブ」の社長。
家政婦 夏川の家政婦。色が浅黒い。
叔父 夏川の叔父。高利貸し「ニコニコ金融」の社長。
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三味線殺人事件 岡田鯱彦 昭和書籍
あらすじ
 新進推理小説家の尾形はあるパーティーで画家の菱山と知り合った。菱山はパーティー後に尾形を誘い飲みに行ったが、そこで彼は「昨秋妻が自殺したが、実はあれは他殺だったのだ。」と語り出した…。


 作品の舞台
 鎌倉・・・菱山画伯邸があります。
 登場人物
尾形 若手推理作家。
淀川 独歩 推理作家界の重鎮。
菱山  健 鎌倉に住む画家。愛妻家だが女にだらしない性格。
菱山伊都子 健の亡妻。昨秋自殺。
菱山 伊都子の亡父。画壇の総帥。健の画の師。
美智江 菱山家の若い女中。
文字辰 菱山夫妻の三味線の女師匠。