久能啓二の作品
久能啓二は、東大文学部美学科を経て鎌倉国宝館学芸員をつとめていた。彼の専門である美術史以上に小説を書くことが好きだったため、いくつかのミステリ作品が発表されている。その経歴からか彼の作品には、美術関連の世界でおこる鎌倉が舞台の事件が描かれていることが多い。
作品名 発行年
玩物の果てに 1959
暗い波紋 1960
土の誘い 1961
手は汚れない 1961
日没の航跡 1962
偽りの風景 1962
死者の風景 1968
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玩物の果てに 久能啓二 光文社文庫
あらすじ
 2月のある夜、陶磁愛好家の吉村が凍死体となって発見された。吉村は酔って自宅近くまでたどり着いたにもかかわらず、外で眠りこけたまま凍死したようだった。古美術商の矢田は、吉村がその日に所持していた影青牡丹文の皿が行方不明になっていることに疑念を抱くが・・・。


 作品の舞台
 稲村ガ崎・・・吉村が凍死していたのは、稲村ガ崎の一の谷にある自宅近くです。
 登場人物 
矢田 古美術商。
吉村 陶磁愛好家グループ「五月会」メンバー。会社員。
由利 陶磁愛好家グループ「五月会」メンバー。「Y商事」社長。
町野 陶磁愛好家グループ「五月会」メンバー。開業医。
滝口 陶磁愛好家グループ「五月会」メンバー。「K電機」重役。
橋爪 陶磁愛好家グループ「五月会」メンバー。作家。
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暗い波紋 久能啓二 東都ミステリー
あらすじ
 扇ガ谷の社長夫人・江口多賀子が自宅で殺された。第一発見者の青木が死体発見後、すぐに不審な男とすれ違ったと証言するが、その男は河崎の学友・脇田だった。脇田は身の潔白を証明するために、河崎に協力してほしいと相談するのだが・・・。


 作品の舞台
 扇ヶ谷・・・江口達也邸があります。
 雪ノ下・・・骨董屋「松美軒」は、段葛の通り沿いにあります。
 仏源寺・・・仏源寺にあった根来塗の漆器を手に入れたのは多賀子でした。(仏源寺は架空の寺名)
 壽福寺・・・脇田の逃走経路は、壽福寺門前の踏切をわたり、小町通りに出るコースです。
 英勝寺・・・多賀子の告別式が行われました。
 登場人物
河崎 亮太 E新聞社会部記者。
脇田 秀二 河崎の大学時代の友人。翻訳の下請け。29歳。
江口 達也 貿易会社「江口商事」社長。45歳。
江口多賀子 達也の妻。陶器蒐集家。31歳。
青木 好三 骨董店「松美軒」主人。35歳。
三宅 E新聞鎌倉支部通信員。
久代 武二 鎌倉博物館員。
屋島 定夫 新橋の洋装品店「ヤシマ洋装店」店主。
田沢 英子 横浜に住む達也の愛人。
宇部 勇造 英子のアパートの隣人。
オリヴィエ 親日フランス人。
村瀬 一郎 元・バス会社「村瀬観光」社長。死亡。
村瀬 妙子 一郎の妻。
鹿島 妙子の恋人。
田沢 俊一 トリス・バー「朱実」のバーテンダー。
エミ 東京駅近くのバー「塔」のホステス。
マリ 「塔」のホステス。
田口 亀ヶ谷坂の住人。
高木 鎌倉署刑事。
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土の誘い 久能啓二 未刊行
あらすじ
 F美術館で行われる「茶碗名品展」に井戸茶碗の名品「光秀」が出陳されることになった。「光秀」の持ち主である瀬川が、世間に出し惜しみしていたため、好事家の間でも評判の高い逸品となっていた。しかし、その「光秀」を搬送中の美術館職員・高沼が何者かに襲われ、「光秀」が粉々に砕けてしまった・・・。


 作品の舞台
 北鎌倉・・・沖が開業する「沖病院」があります。
 由比ガ浜・・・沖は持っていた井戸茶碗を由比ガ浜の古美術商に売り渡します。
 登場人物
葉村 F美術館館長。関東電鉄重役。
岡倉 F美術館のベテラン職員。
高沼 F美術館の若い職員。
瀬川 陶磁蒐集家。麻布に住む「T電機」社長。名器「光秀」の持主。
陶磁蒐集家。鎌倉に住む内科医。
秋谷 関東電鉄社長。
古玩堂 日本橋の古美術商。
窪田 陶磁蒐集家。
陶磁蒐集家。
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手は汚れない 久能啓二 東都ミステリー
あらすじ
 11月にC大学で行われた美術史学会で大失態をした園部が、その後失踪してしまった。園部のもとで美術史を学んだ毛利やその恋人・伊津子は、新聞記事を見て心配するのだが、そんな中、覚園寺の裏山にある石切やぐらの中で、心中と見られる男女の死体が発見される・・・。


 作品の舞台
 今泉・・・園部や多田は、今泉の浄源寺や白山神社での発掘調査を行います。
 覚園寺・・・三宅と大森は、覚園寺の裏山へ回向に出かけます。
 石切やぐら・・・三宅と大森が男女の心中死体を発見します。
 手広・・・手広の大法寺には、専門家の鑑定意見が別れる不動明王像があります。
 登場人物
園部 良三 C大学美術史研究室教授。
長村  敏 園部の助手。
多田 誠也 C大学美術史講師。
毛利 一明 美術評論家。元・園部の教え子。
西山伊津子 「フタバ画廊」社員。毛利の恋人。
宮本 鎌倉近代美術館学芸員。
藤沢 知童 今泉の「浄源寺」住職。
藤沢 怜子 知童の娘。23歳。
山名 善次 「浄源寺」檀家総代。
佐久間良典 今泉の「今泉天神社」神官。
植松 「今泉天神社」氏子中の実力者。
瀬戸 「今泉天神社」氏子。
大木 宮本のヨット仲間。映画の美術監督。
井上 C大学英文科教授。
坂中 井上の従弟。会社経営。
大森 順雄 「覚園寺」住職。
竜 山 堂 横浜・伊勢佐木町の美術商。
隆 栄 堂 横浜・野毛町の美術商。
泰 古 軒 横浜・野毛町の美術商。
津川 雅邦 古美術蒐集家。田園調布に住む電器会社「津川電器」社長。
西口 重蔵 岐阜に住む古美術蒐集家。
小笠原 名古屋に住む古美術蒐集家。電気器具商。
国枝 哲郎 彫刻史学者の大家。園部の義父。
吉沢 神奈川県立博物館館長。
谷村 史郎 神奈川県立博物館普及課長。国枝の五男。
深沼 神奈川県立博物館学芸員。
古郷 隆芳 上野の国立美術研究所学芸員。
田代 茂也 奈良県立博物館学芸員。
菅野 基夫 郷土史家。
三宅 正実 新聞社「E紙」の鎌倉通信員。
斉藤 新聞社「N紙」の鎌倉通信員。
園部由美子 良三の娘。
吉岡 秀夫 怜子の恋人。「F証券」社員。長谷に住む。
桑田 洋子 怜子の女学校時代の友人。
江溝 隆道 奈良の「伝法院」住職。
久保 詳造 「伝法院」檀家総代。
針生 一郎 美術評論家。
東野 芳明 美術評論家。
長野 喜芳 洋画家。
村越 二郎 洋画家。
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日没の航跡 久能啓二 東都ミステリー
あらすじ
 不況に陥った箕原造船の社長・箕原遼二は取引先の銀行との金策が難航していた。それは銀行内部での力が増しつつある副頭取の綾瀬が、貸付反対の立場を取っているからだった。そんな綾瀬が、三浦の小網代湾で毒殺される事件が起きる・・・。


 作品の舞台
 鎌倉山・・・田野辺潔邸があります。
 登場人物
箕原 遼二 「箕原造船㈱」社長。
香島 仙蔵 「箕原造船㈱」経理担当常務。遼二の叔父。
名取 清治 「箕原造船㈱」業務担当常務。
黒崎 剛造 「箕原造船㈱」専務。
桜田 「箕原造船㈱」造船所副所長。
田島 節子 遼二の秘書。6年前に夫を亡くし息子と二人暮らし。
田島 幸彦 節子の一人息子。8歳。心臓病。
江波 文弥 節子の兄。蒲田の「エナミ写真店」店主。
箕原 良太 「箕原造船㈱」先代社長。遼二の父。遼二は良太の次男。
箕原 良一 遼二の長男。遼二の兄。戦死。
桜田  咲 桜田の妻。
桜田 康一 桜田の長男。横浜市立図書館司書。28歳。
桜田 二郎 桜田の次男。「箕原造船」勤務。
小久江 E銀行頭取。
綾瀬  晃 E銀行副頭取。
綾瀬 悠子 晃の妻。
浦  邦子 晃の愛妾。逗子の小料理屋「小菊」の女将。36歳。
北野 律子 「小菊」の女中。29歳。
芳枝 「小菊」の女中。古株。
忠子 「小菊」の女中。
玉枝 「小菊」の女中。
タカ子 「小菊」の帳場係。
仁科 健次 律子の婚約者。「宇品建設」庶務係。28歳。
仁科 仙子 健次の母。
仁科 敬子 健次の妹。商事会社の事務員。
宇品 豊明 「宇品建設」社長。
宇品 庄子 豊明の妹。
脇本 悦蔵 造船界の大御所。元「箕原造船㈱」相談役。
脇本 祐子 悦蔵の孫娘。
桑原太一郎 海運業界の実力者。
田野辺 潔 Y重工前会長。
渡辺邦太郎 B紙新聞記者。康一の友人。
安藤 二流商社の社長。「箕原造船㈱」の古い株主。
K製鋼重役。
養月斎 伊勢原大山の祈祷師。
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偽りの風景 久能啓二 未刊行
あらすじ
 画壇界の大御所である久保崎栄太の弟子・佐倉は新見会秋季展で師の作品を鑑賞していたが、何故か作品から別の人物の作風を感じた。その画風は半年前に変死した佐倉と同じ弟子の伊吹卓也のものだった。さらに伊吹の作品がある人物によって、ことごとく買い占められていることを知り、佐倉は疑念を持つが・・・。


 作品の舞台
 由比ガ浜・・・伊吹が島岡と共同で借りていたアトリエがあります。
 門を出た佐倉は駅への道をとらず、はじめての露地を右に折れた。
 ゆるくカーブして稲村ヶ崎の向うに消える広いドライブ・ウェイ、
 左手の由比ヶ浜と材木座を結ぶコンクリートの橋。  (原文のまま)

このあたりの文章から見ると、アトリエは由比ガ浜辺りにあったのではないかと思われます。
また、久保崎栄太の作品『晩冬の海』も、由比ガ浜の海を描いたものです。
 登場人物
久保崎栄太 画壇界の重鎮。
久保崎芙久子 栄太の妻。日本画壇の重鎮、吉村華照の娘。
佐倉 吾郎 栄太の弟子。
伊吹 卓也 栄太の弟子。半年前に変死。
木古庭 弘 栄太の弟子。
松村 一宏 栄太の弟子。
菅間 栄太の弟子。
橋本 栄太の弟子。
木古庭幾代 弘の妻。
伊吹 卓蔵 卓也の父。画家。
小里美代子 卓也のフィアンセ。
秦  和郎 銀座「勝栄画廊」の画商。
関口 仙介 浜松町の古美術商。
山原 日本橋「青竜堂」の画商。
大島須美子 絵画を買う謎の女性。
田村  勉 卓也と同じアパートの住人。
島岡 信一 卓也と共同でアトリエを借りていた画家。
佐伯 サヨ 卓也と島岡が借りていたアトリエの家主。
新城 敬二 栄太の古い画家仲間。
藤代 琢造 栄太の古い画家仲間。
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死者の旅路 久能啓二 河出文庫
あらすじ
 鎌倉の西のはずれにある仏法寺ヶ谷の宅地造成予定地で、大学教授・国松泰宏の死体が発見された。鎌倉署の赤沢は事件現場に駆けつけたが、現場では事故死の線で捜査が進められていた。赤沢は関係者に聞き込みをしていくうちに、国松の歴史的発見に事件が関係しているのではないかと疑念を抱くが・・・。


 作品の舞台
 仏法寺ヶ谷・・・宅地造成予定地で国松の死体が発見されます。
 
太平寺跡・・・国松が発見した書簡の中に「太平寺」に関することが出てきます。
 登場人物
関口三之助 私立S大学文学部長。
国松 泰宏 私立S大学文学部教授。
米村 好夫 私立S大学文学部講師。
松本 駿介 三之助の甥。大学受験生。関口家の居候。
兼末 定山 大雄寺住職。国松の友人。
高岡  明 私立S大学国松研究室助手。
矢代 則子 「芸術出版」編集員。
柳町 チサ 新橋の小料理屋「チサ」の女将。
村木 義夫 E不動産社員。
乗川 上野の博物館員。
芳賀 京子 定山の愛人。
赤沢 鎌倉署警部補。34歳。
三浦 赤沢の上司。39歳。
熊谷 鎌倉署刑事。